かじつ
」のレビュー

かじつ

阿部はちた

過ぎし夏の日に二人で食べた果実

ネタバレ
2025年10月11日
このレビューはネタバレを含みます▼ 親同士の再婚で兄弟となった同い年の高校生・恭一と松真のお話。沖縄の島嶼で恭一と松真は6年間、家族として一緒に暮らしましたが、親の仲が上手くいかなくなってしまい、今は恭一は母親と一緒に那覇で暮らしています。夏休みになり義父と松真の暮らす島にやって来た恭一は、中学の頃から松真への恋を自覚していました。久しぶりに会った松真に先輩女子から電話がかかってきたことをきっかけに、恭一は焦って松真にキスしようとして平手打ちされてしまいます。恭一は、幼い頃に松真が原因で負った額の傷を見せつけて松真を黙らせ、強引に口づけるのでした。無理やりキスしても松真の心が手に入るわけではなく、恭一は悔し涙を流しながら、昔一緒に食べたパパイヤを貪ります。沖縄の豊かな自然と強い日差しの中で、DKの青くやるせない想いがムクムクと膨らみ暴発します。松真を想う先輩女子、恭一の片想いを知りながら「俺にすれば」と言うかつての親友、あっちこっちにぶつかって痛い思いをしながら二人が未来を選び進んでゆきます。タイトルの「かじつ」が過日であり夏日であり、思い出の果実、そして佳日となってゆく瑞々しいアオハルでした。
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