美しい野菜
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美しい野菜

松本ミーコハウス

新しい自分になる

2015年5月26日
まずはエロ描写が多いのが特徴です。それを求めて読むのにも適した漫画ではありますが、キャラクターのみせ方が素敵でした。
人間も30代になると深いところで自分自身に向き合わねばならない時を過ごすものとはいいますが、31才の1人の男性が己を生かすための「社会性」と「本当の自分自身」との間にある深い河を自覚しその荒れ狂う濁流に溺れ飲まれいくような展開で、目が離せませんでした。正しくありたいと願いたくなるほど、本当の自分は正しくない。否定し続けてきた「自分」に向き合うのは本当に恐ろしいことだと思います。
一方、その辺りを思春期のうちに受け入れてきた25才の男性は、恋した彼が濁流に飲まれていく様を崖の上からうっとり眺めながら、自身もまた別のところで父親という絶対的な社会を受け止められない様子が描かれていて、これは生まれ変わる二人の話なんじゃないかと思いながら読みました。目の前にある「矛盾」から逃げられなくなった彼らがお互いを通してどう始末をつけていくのか、続刊も楽しみにしています。松本先生の作られる、切なくも優しい背徳感は他にありませんね。
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