朝が来たら、ふたりは【単行本版(シーモア限定描き下ろし付き)】
」のレビュー

朝が来たら、ふたりは【単行本版(シーモア限定描き下ろし付き)】

81

独特な空気感が漂う雰囲気が好きでした

ネタバレ
2025年11月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ 私にとって心に残る一作となりました。
ゲイであることを家族にカミングアウト済み、会社でもオープンにしている甲斐さん(受)と、隠している藤井さん(攻)のお話。もし自分が性的マイノリティーだったらどの程度オープンにするだろうか、できるだろうかと考えさせられました。ノーマルであっても会社の人と恋愛の深い話をすることはそうないだろうし、性的指向を隠すことに罪悪感は感じないし、あれこれ勝手なことを言われたり興味本位に詮索されるのは嫌なので、私は藤井さんと同じ選択をすると思います。
ありのままでいたいという甲斐さんの気持ちはよく分かるけど、悪意のある人、悪意なく傷つけてくる人は少なくないだろうし、実際に甲斐さんもそんなことはたくさん経験しているからこそ、関係を続けることで藤井さんまで巻き込みたくないと身を引く選択をしたのは、切ないけどとても理解できました。
高校生のときの藤井さんが、好きだった人がゲイばれしていじめられていたのに何もできなかったと引きずる気持ちもよく分かるし、自分がターゲットになることに怯える気持ちもすごくよく分かる。それでも当時の自分の精いっぱいを藤井さんはできていたと思います。偶然再会して気持ちを伝え合えてよかった。
本当のことを明かすのはすごく怖かったはずなのに、どうなるか分からないけど一緒にいたいと甲斐さんに思いを伝えた藤井さんにじーんときたし、お話が進むにつれて藤井さんの纏う雰囲気が柔らかくなっていったのも素敵だなと思いました。

絵柄がとてもシンプルで背景なども描き込みが多くないため白っぽい印象を受けますが、全体に流れる静けさを感じる空気感がお話に合っていると思ったし、私は好きでした。人物の描き分けができていないというご意見も見られますが、私はあまりそう感じませんでした。むしろ、こんなにシンプルな線でよく表情を豊かに描けるなと感じましたし、登場人物もそれぞれ別の人にちゃんと見えて、混乱したり没入感が阻害されることはなかったです。特に顔や首への影の付け方がとても好きです。
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!