500年の営み
」のレビュー

500年の営み

山中ヒコ

無数の中の「特別」、エンドの解釈について

ネタバレ
2026年1月10日
このレビューはネタバレを含みます▼ この作品はサン・テグジュペリ『星の王子さま』で描かれる「愛」に通ずるところがあると思う。とらさんが星の王子様で、ヒカル(プロトタイプ)がキツネという構図だ。250年後の世界で説明されていた戦争史やロボット工学技術は具体性があった一方、ビル崩壊からもう250年経った後の話は全体的に夢物語のように感じた。この500年後の世界で砂漠を移動するとらさんは星の王子さまのようだ。
また『星の王子さま』では王子様が、キツネやバラはたくさんあるが心を通わせたたった一つだけが特別な存在になることを言っている。他の無数のアンドロイドよりも、さらにはより生前の光に似た優秀なアンドロイドよりも、不器用ながら自分に全力で向き合おうとする”3割減”のヒカル(プロトタイプ)を選んだとらさんの姿がそこに重なる。
(王子様)「きみたち(たくさんのバラ)は、であったときのぼくのキツネとおんなじ。あの子は、ほかのキツネ10まんびきと、なんのかわりもなかった。でも、ぼくがあの子を友だちにしたから、もういまでは、あの子はせかいにただ1ぴきだけ。」
別の話になるが、ラストについてレビューを読んでいると、ハピエンと思った人や読者に明るい未来を想像させる終わり方だと感じている人がいる。自分と違う感想があり興味深い。私は現実ではハッピーではなかったが、ヒカル(プロトタイプ)の幻想のなかでは幸福な再会を果たしたと解釈した。現実では砂漠でとらさんは衰弱して息絶え、ヒカル(プロトタイプ)は家を建ててとらさんを待つ。その後長い時間が経ち砂漠には緑が生える。ある日ヒカル(プロトタイプ)が草原を散策し、彼の亡骸を発見してしまう。一方ヒカル(プロトタイプ)の幻想のなかではヒカル(プロトタイプ)の脚が直っている。二人は満喫し夢を叶える。こちらは時間軸がヒカル(プロトタイプ)がとらさんを待っている頃か、500年後からさらに時間が経過した後かわからないが。…と考察したが悲しすぎるので結局みんなハッピーだったということにしたい。
いいねしたユーザ2人
レビューをシェアしよう!