美しい彼
」のレビュー

美しい彼

凪良ゆう/北野仁

すごい

ネタバレ
2026年1月11日
このレビューはネタバレを含みます▼ レビューがどれも熱烈すぎて、これは読まねばと思い、読み始めました。
結果、沼にはまりました。大変な沼に...
ノベライズも読みました。
情景がありありと描かれているのにまず驚き、コミックで読んだ情景との対比に既視感を、初めて見る描写には深みを感じ、またコミックに戻ってくると作品のクオリティがいかに高いのかが改めてよくわかりました。
活字で埋められた作品の中で、どの部分にスポットライトを当てて、どんな風に描くか。
どこをはしょってどうスピードをつけていくか。
あの名シーンを、どんな風に描くのか。
その采配が秀逸すぎて、圧倒されました。
しっかりと描かれた活字の物語としての作品がすでにあるから、コミックでのストーリーが完成されている。
ト書きがいちいち美しい。使われる単語が高尚だ。言わずもがな、絵が美しい。
そして、語りかけてくるコマ。
鼻と口から下だけを描き、絶望感を出す。
教室の扉と机のある風景を描く。
時間の流れが描かれることで、より空気感が生まれる。
まるで、映画を観ているようだった。

圧倒されたのは白と黒の使い分け。明るかった小山と平良の二人の校内での白の多いページから、突然黒が多い清居との回想シーンになり、小山を振るシーンでは、大学の庭に出て木立の影がずっと顔の一部や全部を覆う。

なんて、映像的で美しいのだろう、まるで薫り立つような。
映画に撮影のカメラワークやカット割りのテクニック、影や空気感のテクニックがあるとしたら、これはコミックとしての他に類を見ない圧倒的なテクニックだ。

白と黒の使い分けでは他にも、瞳の色。白く描く時、黒く描くとき、なんて瞳の力が強いのだろう。
呆然とする。吸い込まれるように見つめる。気持ちをぐっと表に出さないようにする。
いろんな想いが、そこからしっかりと汲み取れるのだ。

コミックなのに、登場人物たちが、演技している。
演技というのは、実際にこんな気持ちでいるよと視聴者に見えるように立ち振る舞うことだ。
これは、コミックなのに、セリフ以上に彼らの語らぬ瞳の色が、多くを物語っている。
どこまでも引き込まれて、どこのコマにも無駄がない。
全てがパラパラ漫画の一ページてあるかのように、ひとつのシーンを型どっている。

ああ、まとまりがないが、とてもよかった。
夢中になって読み耽った。
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