このレビューはネタバレを含みます▼
高校生の頃に夢中になって読んだ大作です。あれから随分時が経ち、少女漫画自体も年々合わなくなっていって敬遠するようになってしまいましたが、この漫画は大人になった今でも読むとズシンと心に響きます。まさに漫画界の至宝、人生の教科書。
文明が荒廃した近未来の日本を舞台に、主人公である少女が殺された兄に代わり革命軍の民衆を率いていくという超ハードモードな序盤から始まり、戦いに身を投じ、腐敗した王家を打倒するまでというのが本編の大まかな内容です。その中で様々な人々に会い、その人達の人生を知り、対話と経験を重ねながら主人公も成長していく。彼女とその恋相手との恋愛模様に留まらず、周囲に登場する数多くの脇役にもドラマがあり、それぞれの生きざまが実にドラマチックに描写されます。敵、味方、仲間、友人…時には名前さえ明らかにされないような市井の人々の人生までもが濃密に描き出される、それが本作一番の見所です。
そしてそこには一人一人の正義があり、信念があり、時にはそれが受け取る相手や場面によっては善であったり悪であったりもする。主人公も兄の仇であり、革命軍の敵でもある赤の王に知らず知らずのうちに出会って恋をしてしまい、後にお互いそのことに苦しんで葛藤し続けます。単純な善悪というところに留まらず、人間とは多面的で複雑な生き物であるということが、各登場人物を通してまるで実在の人間かのように生々しく表現されている。ここがこの作者さんの真骨頂なのだと思います。これだけ骨太な人間像が描ける作家さんはそうそういない。この作品も少女漫画というよりも、まるで壮大な大河ドラマの群像劇を見ているかのようです。
独特な絵柄で読者によっては好みが分かれるところだとは思いますが、ぜひ毛嫌いせず色々な人に読んでほしい。歴史上の出来事や人物から着想を得ているかのようなシーンがあったり、沖縄から北海道までの日本各地が舞台となり、その都度それぞれの地理や文化についても触れられていくので、そういった要素が好きな方が見るとこれまた発見が多くて楽しいかも。連載終了後に出た外伝も、色々な人物にスポットを当てて深掘りしていて読みごたえは抜群です。本当に本当に、長く広く読み継がれてほしい少女漫画界きっての名作です。