このレビューはネタバレを含みます▼
辛口です。
まず、「司書の千春さんにみつめられたい」というタイトルについて。この場合、見つめられたい主体は攻め、もしくは読者であると考えられます。攻めが主体となり、千春さんに見つめてもらうために物語が展開していく話、あるいは読者が物語を通じて千春というキャラクターの魅力やドラマ性を感じ、「私もみつめられたい」と思う立ち位置になる話であれば成立しますが、本作はそのどちらにもなっていません。
本作は主人公である千春の視点と主体で進み、読者も基本的に千春に共感する位置から物語を追う構造になっています。そのため、「みつめられたい」という欲求を前面に出したタイトルと、物語の構造がかみ合ってないと感じました。
次に、初手で最重要な設定であるコンプレックスを放り投げている点です。千春は子供の頃に目つきが悪いと指摘されたことをきっかけに眼鏡をかけ、人と目を合わせることが苦手で怖いと感じる人物です。本来ならこの設定が物語の核になるはずですが、攻めと初めて目が合ったときは怖くなかったとされ、その後も目を合わせることへの葛藤は千春側からは描かれません。過去の知り合いだったなどの理由付けもなく、見つめることへのハードルが初手から存在していないように見えます。
さらに、出会いからわずかで千春は攻めに即落ちし、責めも唐突なスパダリムーブを始めます。一方で攻めは、子供の頃に親に構ってもらえなかったため特別や大切にすることが分からないという設定を語りだし、その状態であれほど積極的にふるまえるのか疑問が残りました。コンプレックス設定全体が雑に扱われている印象です。
加えて、説明不足や違和感のある描写が多数みられます。初対面とは思えない距離感、見ただけで眼鏡が度なしだとわかる描写や眼鏡をはずそうとする流れ、何もない床で突然滑り後ろには攻め、あせって足から力がぬける横には攻め、図書館での仕事中に泣いたり抱き合ったりキスしたり、突然の雨で「君の家で雨宿りしたい」と言い出す千春に、まだそこまで関係構築してないよね!?となり、ニッチなデート先で大学の友人に遭遇、攻めと元カノとの修羅場が出会いなのに性別への葛藤や疑問を千春が持たない。
以上のように、キャラクターの性格付け、環境設定、行動の作り込みが甘く、テンプレ表現が重なった上にタイトルと内容の不一致もあり、総合的に良さを見出せませんでした。