雪と松【シーモア限定特典付き】
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雪と松【シーモア限定特典付き】

高橋秀武

神作品

2026年2月15日
雪の中で倒れていた雪を、医者の松先生が助けるところから始まる。松は「金の代わりに死体を持ってこい」と言って雪を送り出す。松なりの考えがあっての言葉だったが、雪が思いがけない形で帰ってきたことに喜びを隠せない。この第一話の話の題名が「雪を松(待つ)」なのが上手い。孤独な二人が体を重ねるうちに、お互いが自分の「親」であり「家族」であり「家」と思える相手となっていく。台詞が一つもない静謐な日常が、何よりも雄弁に彼らの幸せを物語る。好きなシーンは、行為の途中で刺客がやってきて、元ヤクザの凄腕の雪が返り討ちにしようとする所。素っ裸でナニが上を向いたまま、刀を抜いて立つ雪に大笑い。他にも、浮気騒動とか隠し子騒動とか、小さな日常のいざこざが起きるのだが、どの話も面白い。松先生の方が雪にゾッコンであたふたしているように見えるが、雪の方が実は我を忘れるくらい松先生への執着は人一倍。自分自身を丸ごと受け止めてくれる松先生の海よりも深い愛に静かに溺れている。「先生のは、かたいけど少し短い」とか、2人の会話のやり取りにもくすっと笑えるし、悲しみや辛さをお互い補い合い、温め合うシーンにもジーンとする。何度読んでも、どこから読んでも、とにかく面白い。3巻のラストで、ああ、この2人が完成したのだと見届けられる気持ち。世界観が独特なので好き嫌いはあるかもしれないが、私の中では神作品。私の貧相な語彙力でこの作品の良さを表現できないのがひたすら悔しいと思う位、良い作品だった。
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