親なるもの 断崖
」のレビュー

親なるもの 断崖

曽根富美子

待ってました!

ネタバレ
2015年8月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ 数ヶ月前から各所で話題沸騰だったこの作品、こちらで配信がなかったので、読むのを諦めていました。しかしこの度の配信開始を知り、すぐに購入してしまいました。

肝心の内容ですが…。(第一部中心です)
遊郭ものの漫画と言えば、江戸時代の吉原・島原を舞台としている場合が多いですが、この作品は昭和初期の幕西遊郭(北海道室蘭)が舞台です。また、よくある女同士のいざこざや、遊女の客の取り合いはあまり中心に描かれていません。それどころか、同じ境遇を生きる者としての「仲間」意識すら感じられます。この点は、遊郭を舞台にした作品には珍しいな、という印象を受けました。
そして遊女だけでなく、女将や芸妓、番頭や労働者といった全ての登場人物にスポットライトを当て、上手く個々の内面を描き出しています。それぞれが必死に生きた時代のこと、「この人なんだかな~」と思う事はあっても、本気で腹の立つような人物はいませんでした。ここまで多くの人物に感情移入できたのは、私自身初めての経験かもしれません。

作品中の言葉ですが、親が子を捨てなければ生活できなかったように、子が親を捨てなければ生活できなかった…。まさにそんな時代の話だと思います。読後はしばらく考え込んでしまうくらい、私にとって衝撃的な作品でした。
必死に生きようともがいた人々と、容赦無く迫り来る激動の時代。パーマネントやトーキー(映画)という言葉も登場する昭和時代だからこそ、よりリアルに感じられます。
今まで幕西遊郭を知らなかったという方にこそ、是非おすすめしたい作品です。
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!