贄の聖女と救済の契り 不良魔法士と綴る二度目の恋
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贄の聖女と救済の契り 不良魔法士と綴る二度目の恋

戸浦/村田天/Shabon

視野を拡げれば救いはすぐ傍にある

ネタバレ
2026年3月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 親戚に疎まれ虐げられた幼少期、救い出してくれた叔父の最期を救うことができず、ずっと不全感を抱えたまま癒しの魔力に目覚め聖女となったリゼルカがヒロイン。
教会に属し、人々の傷や病を癒すのだけどそれは自身に苦痛を伴う行為でもあり、リゼルカは苦痛に耐えてひたすら人の役に立てる自分であることを自分に課す、自己犠牲のうえに奇跡の聖女としての地位を築いていきます。
だからこそ、突然魔力を失い、空の聖女となってしまったリゼルカの失望と焦燥、自分の価値が見出だせない不安は尽きず、魔力を取り戻すことに拘り続けたのでしょうが、物語前半、ヒーローである魔法士シャノンの言うとおりその在り方は卑屈です。
ここからシャノンの計らいで診療所に通い出し、そこで働く人々や患者たちとふれあうことで魔力の有無に関わらず「なるべく多くをできる限りで」救っていくことができることを教えられ、自分の在り方を見つめ直す機会を得ます。
元々リゼルカとシャノンは幼馴染み。ですが、心許せるような間柄ではなく、少なくともリゼルカ側のシャノンへの印象は良いものではありませんでした。魔力を取り戻すため(シャノン側からは保護のため)2人で暮らすうちに見えてくるシャノンの本当の姿に惹かれてどんどん近づく2人の距離。
リゼルカの存在に救われたシャノンの過去と彼のリゼルカへの想い。
聖女として頑張ってきたリゼルカを支えた初恋の文通相手との思い出や彼への想いといった伏線もあって、リゼルカが何に気がつき、どう気持ちを整理するのかが恋模様の焦点として展開されていくのが物語の主軸。そして、この物語のテーマは一貫して『救済』です。
リゼルカを贄として世界の救済を目論む邪教を信仰する黒幕の物語が短いながらも語られており、リゼルカも黒幕もどちらも救いはすぐ傍にあるのに気がつかないだけ、視野を拡げて気づけるかどうかが明暗を分けるということの象徴のようにも見えます。
3巻完結の中に結構いろいろ詰まっててちょっと端しょった感はあるものの、見処のある作品。最後まで面白かったです。
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