このレビューはネタバレを含みます▼
前作の『ゆうちゃん』、『うみのお城』、そして別媒体のインタビューを読んで、「他者(社会)から押し付けられた価値観や判断基準から解放されて、自分の幸せは何かを自分で決めること」、つまり「自由に生きること」が蜂煮先生の作品のテーマのひとつなんじゃないかなと(勝手に)思います。そして、私はそこが好きです。
この『てんある』では、アサヒは最初は宗教に、そしてその後にはミカに依存します。日々の生活の判断や、自分の幸せ、自分の人生そのものを他者に委ねてしまう。でもそんな生き方は幸せと言えるのか?自由と言えるのか?
そしてもう一つ、この作品には「愛してる」というセリフが何回か登場します。重要なシーンに出てくる、大事な言葉です。そして、ここで示される「誰かを愛すること」とは、ずっと末長く一緒にいる、という意味だけではなく、相手の自由や境界線を尊重しつつ、時には一緒に、時には離れながら共に生きていく、という意味をも含んでるんだと、ミカの言動から分かります。
こんなふうに「自由に生きること」、「誰かを愛すること」は大人にしかできないことだと思います。人間として成熟してないと、こんな生き方はできないんじゃないだろうか。
だからミカは天国に帰り、「お子ちゃまには分かんねぇよ」と言うんですね。そしてアサヒも、ミカがいなくなった理由を悟り、日々を淡々と静かに生きていく。ほんと、大人です。かっこいい、私も大人になりたい。
これは私が一読者として受け止めたものなので、先生がどう思ってるか本当のところは分かりません。でも、私は蜂煮先生の漫画を読んで、すごく大人だなと思うし、私も自由に生きたいなとも思う。絵や演出が独特で笑っちゃうところばかりだけど、読み終わるといろんな方向に考えがふんわりと広がっていく。蜂煮先生の漫画をこれからも読んでみたいと思います。
「てんある」ってどういう意味なんだろう。それがずっと気になりました。