このレビューはネタバレを含みます▼
もの凄く不穏で怖いけど、これは何処にでも、いつでも、起こり得る事。事象。現実。あまりにもリアルでゾッとしました。妻と話し合えない令太郎。妻の和美はまともに言葉が通じず、勝手な被害妄想で目の前にある事をすり替えて(すり替えている事にすら気付かない)ヒステリーを起こす。そんな令太郎に近付くシンママの沙耶子。彼女が令太郎の癒やしとなって行く不倫モノなのかな、と思いきや。で、ある。そんな簡単な事では無い。後半には沙耶子もまた結構思い込みの激しいヤバい女だった事がつぶさに描かれて行く。物語は大人達だけで進行して行かない。バタフライエフェクトの様に、様々な人を通して拡がって行く。令太郎と和美の一人娘の一花は、不登校で寡黙で、一見何を考えてるのか分からないが、おそらくこの物語の唯一の良心。目の前に起きた事象をただ1人、先入観を持つ事無く、歪み無く見ている。そして両親の不和や言葉の通じ無さに心を痛めている。そんな一花に最初から好意を持って接する光。高校生の彼等は非力だが、起こるコトに正面から向き合って、互いに大切だと言い合えている事に心からホッとする。クラスで起こる虐めやそれを煽る黒幕の生徒。親切そうに擦り寄るカウンセラー。都合良く生徒を排除する教師。そんな者どもは実際には雨後の筍の如く次々に現れる。子供達がそれに飲み込まれてしまわぬ様に。とだけ祈る様な気持ちで読んでいる。1番好きなのは一花が男子と取っ組み合って喧嘩して、虐めの首謀者を吐かせるところ。彼女はまだ女子高生だが、聡明で強い。光を守る!と言い切れる強さもある。人を信じられる強さもある。本当に強いというのはこういう事なんだよな、と惚れ惚れする。令太郎はただの男だが、まだ冷静に人の話を聞けるところがある。伝聞では無く、正しく現実を見ようと努力をしている。物語の結末は「捨てちゃえば」家族にはならないだろう、とは願っているものの、さて。