九重家献立暦
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九重家献立暦

白川紺子

塗りの重箱に入れた花見弁当を和装で味わう

ネタバレ
2026年7月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ 母方の伯父、九重喜夫の口車に乗せられて、大学卒業後に実家に帰ってきた九重茜です。
広大な屋敷である実家を独りで守ってきた大叔母の九重千代子を苦手としていた茜でした。
そして、大人になったことで、初めて大叔母の口から彼女の来し方について知らされます。
大叔母は、心無い二親から容貌が美しくないことを事あるごとに聞かされ続けていたようです。
それなのに、結婚を奨められたので、かたくなに断って教職の道を選んで生計を立ててきたそうです。
次には、独身を理由に、身内から養子を迎えるように迫られ、望んでいた男子ではなく女子を養子にすることになったようです。
それが、茜の母の景子でした。
自分が望まれていなかったことを知っている景子と大叔母の折り合いが良くないのは当たり前だったでしょう。
茜が共に暮らした人は、母の景子と大叔母の千代子です。
母とは十二年間だけで、既に会わなくなって十年の年月が過ぎているので、去る者は日日に疎しですが、忘れようと思っても忘れるのは無理でしょう。
大叔母とは十八年間で、大学の四年間の空白期間はありましたが、再び他人を交えて暮らすようになったので、二人だけでは到底生まれなかった得難い心が通う時間をお互いに手にするようになります。
茜の母の景子と、仁木一の父が無残に壊してしまった家族の形が、仁木一改姓十日市一によって、新生されて作られていきます。
家族というものは、一緒に住んで、一緒に食べて、色々なことを話してお互いを知るようにして、同じ時間を共有して初めて家族になります。
血の繋がりがあるのが家族ではないのです。
心の繋がりがあるのが家族なのです。
十日市一は、姓が変わって、つまり尊敬できる人を義父とできて、解ったのでしょう。
『九重家の献立暦』は、確かに大学の卒論の素材にうってつけで、これだけのものを今の時代に、見つけることは難しいはずです。
それを素材にして、三人で新しい家族を作っていく試みをしてみたら、思っていた通りに上手くいったというところでしょうか。
今後は、一と茜がそれぞれの父と母に付けられた棘を抜いて、傷を癒すという手順が残っています。
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