真綿の檻
」のレビュー

真綿の檻

尾崎衣良

視点が変わる見応え

ネタバレ
2026年7月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ 無料分から。
人間を俯瞰して描いたような作品。
「真綿」というのが絶妙ですね。真綿で首を…という慣用句もあるように、瞬殺されるほどのダメージじゃないんだけれど、それは確実に蓄積されている。昭和までの家族で、特に田舎だとこういうのは珍しく無かったと思う。誇張も多少入ってるかもだけど。
「介護」の必要が生じた時って、誰しも「言いやすい人間」に頼るんよ。娘と息子がいたら、娘に全部寄りかかるのが圧倒的な気がしてる。(うちもしかり)
“なんでそんな目にあってるのに世話しに行くのか“みたいな意見もあるだろうが、積もったものには不満や辛さだけじゃなくて想いも時間も入ってくる。「情」って複雑よね。それが報われなくても、消えないから苦しい。優しい人なら尚更、相手にチクチク刺され続けても、刺し返す事が出来ないんだよね。したらしたで自責の念に悩まされたり。みんな同じ性格じゃないからねぇ…共感や罪悪感に乏しく、自分の利益優先の「弟」みたいな人だと、断る事も押し付ける事も無視する事も出来てしまう。娘があの後も実家に通う描写にこそリアリティを感じました。ヒロインがあの「夫」に出会えて良かったと心底思うわ。
オムニバス的に主人公が変わっていくのと、1話完結ぽくて読み易い。視点を変えれば「強か」にもなり、嫌な奴の中にも矜持や潔さがある。人間心理の描写に軽めの日常サスペンス要素もあって地味に面白いと思った。ただ…明るめのストーリーでは無く、単純なスカッとは無い。じわじわとモヤりながら読み進める感じです(まさに真綿で)
勢いで今すぐ全巻買うぞー!!みたいな爆速感は湧かないんだけど、なんか気になる。そんな不思議な魅力がある作品でした。◯百万ダウンロードにも納得です。
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