ウリッコ
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ウリッコ

殺野高菜/大森かなた

自分本位な主人公がたまらなく愛おしくなる

2026年8月1日
■所謂ネカフェ難民の女の子が、漫画を描く話。だが、気付かされる──これはある種「理想化」された漫画家像/創作者像なのだと。本作の冒頭の一部でも一読された方ならば「どこがだ」と突っ込まれることだろう。満足な画材もなく、漫画を描く上での基礎的な知識やスキルもなく、腰を落ち着けられる家さえない。僅かな金で赤の他人に春を売り、その日生きる糧を得る…およそ理想の創作環境とは言い難い。その人間性とて褒められたものではない。他人の好意や善意には無頓着で、同じ境遇を生きる仲間にも辛辣というよりは無神経な言動を繰り返す…およそ共感し得ないキャラクターだ。だが、そんな自分本位極まりない主人公──キズミが漫画という自己表現に打ち込み始めたとき…我々読者はその見方を変えていく。■彼女の創作の発起──それは読者を喜ばせようとか、世に認められる素晴らしい作品を残そうとか言う『お題目』ではない。生きていくための目先のカネを得るためであり、現状の打開という微かな希望だ。そこに仄かに見え隠れする、ありのままの自分を受け入れてほしいという想い…しかし、自己表現として彼女が選んだ創作という行為〈リアル〉は、そんな甘ったれた夢想を虚しく打ち砕く。■──それでも、やめない。それでも、自分には何かがあるはずだと、希望に縋り付き、自分を奮い立たせ作品を搾り出すその姿は、紛れもない一介の創作者の姿だ。そして、あえて七難八苦の道を歩み続けるその姿に、どこか我々は「創作者とはこうあって欲しい」「世にひしめく作品たちには、これほどの情熱が注がれているのだ」という理想像を重ね合わせるのではないだろうか。垢と埃とスクリーントーンの切れ端に塗れ、おぼつかない手つきで紙面に情念を刻み付ける彼女のその姿が、今はただ眩しく神々しい。
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