「きみを死なせないための物語
」のレビュー

きみを死なせないための物語

吟鳥子

愛が禁忌の世界で愛を描いた近未来SF

ネタバレ
2026年9月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ 読んだのはずっと前だけど、読了後の言語化が難しくレビューは控えていました。久しぶりに見たらまた見方が変わって今の自分が感じたレビューを残したいと思い書きます。
少女漫画SFの傑作のうちの一つだと思います。特に主要幼馴染4人が成長していくにつれ描かれる愛の変化の描写がお見事でした。
隣人愛、自己愛、性愛そして家族愛。愛を卑しいものとする管理監視社会で翻弄され、やがてジジという短い命の少女を通して、それぞれの形で愛を受け入れていく。
愛という感情が起因して悲劇が生まれた時もあるけど、新しい人類の形へと進むのもまた愛の形……という終わりも綺麗でした。
あの幼馴染4人がそれぞれ愛の形を担当していたと思います。ちょうどギリシャ神話も愛は4つとしているので、作中に散りばめられた神話要素はそういう意味もあるんでしょうか。人のような愛を天上人という『神』に管理されているのも、コクーンの住人は人よりもキリスト教圏の天使の暗喩なのかなと思ったり。
そう思うと「アジア」という名の女性からソウイチロウとは関係のないネオテニイが生まれたらしいのも、アジアに多い多神教……将来民主政になる暗喩なのかな~とか思ったり。
ジラフ番外編のソウイチロウが夜が居た若い頃のように髪を切っていたのをみるに、星間移動の手段を構築する事も、木星のままの表示も国民投票で決まったのかな。
アラタ軸最後「ネオテニイではない読者は旅にはついて行けないから祈ることしか出来ない」と読者はおいていかれる側の視点なのも良かったです。
本当に時々読み返して、その都度気づく事がある作品だと思います。買って良かった。
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!