狂鬼の愛し子
」のレビュー

狂鬼の愛し子

宇奈月香/サマミヤアカザ

読み手の好み次第、物語の深さは中の上

ネタバレ
2015年10月15日
このレビューはネタバレを含みます▼ "作者買い" ではなく "ソーニャ文庫買い"です。

ソーニャ文庫内全体で言えば、
ヒーローの歪み具合はなかなかです。
純粋な欲望、執着、狂気……といった感じなので
ヒーローの言葉遣いが気になるタイプでなければ
この点だけでもソーニャ文庫ファンとしては魅力的でしょう。

ただ、言葉遣いが気になるタイプ。
紳士的、高圧的、冷静沈着そういう雰囲気のヒーローが好き、という方には向かないかもしれません。
こちらのヒーローは「~行こう。ね?」「怖かったか。ん?」「~だなぁ」と語尾が幼子に話すような口調なので、同じ作者様の[断罪の微笑]のヒーローとは真逆に近い性格、口調になります。

ヒロインは、心奥底で自分の境遇に嘆いて、無意識に現実から目を背けているタイプ。
はっきり申し上げると、"表だけしか見ない馬鹿な世間知らず"と言えるでしょう。

ですが、こちらのお話しは、ヒロインに現実と向き合わせるのが第一段階の目的に近いので、ヒーロー(二枚上手の冷静さ)とヒロイン(現実逃避のお馬鹿さん)の立ち位置は合理的かと。

それと、大体のヒロインは、無理矢理でも何だかんだ抵抗が疎か…という物語補正に違和感ある方には、こちらのヒロインはオススメです。

後半まで、体とは裏腹に、いや、やめて、と叫んでます(笑)
現実には程遠いですが、それでも拒絶の在り方は正しいと思います。

話の流れは、少々飛びが目立ちます。

最小サイズで180ページなので、仕方ないのですが
個々の物語も重要な点なのですが、あらすじに近い簡潔さでしか語られないので、時々「どうしてそうなった(;・ω・)」と行動や心理描写に違和感を感じることもあります。ただ、まぁこんな感じかなと予想できる範囲なので、自己完結できる程度の違和感ですね。

ラブシーンはなかなか盛りだくさん、微アブノーマルなとこもあるので、そこ目的でも楽しめるかと。

脇役の歪み具合もなかなかいいですよ。

ヒーローの猟奇的なとこも、評価できます。
ヒロイン以外への執着が皆無なので
他は邪魔ならあっさりと殺せるヒーローです。
ただ、苦手な方もいるかと。
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