キューが入ると世界が変わる





2015年10月31日
演劇が持つ独特の世界観を、強烈な個性のある描写で描き出す作品。あっと言う間に3巻まで読み切ってしまい、完結していることが惜しいと思うほど。もっと続きが読みたかった。/役者が役に入り込むことを「CUE(キュー)が入る」というそうですが、その瞬間、自分の知覚する世界がガラリと変わってしまう錯覚ーー本人にとっては現実ーーが、生々しく描かれています。役者の世界とはこういうものなのかな、と感じられて、鳥肌が立ちました。/ただ、一方で人を選ぶ作品でもあります。作品の中で「どうせ演劇なんて 本気で観に来る奴しか来ないんだ」という了三のセリフがありますが、まさにそう、という気持ちです。本気で観に来る奴しか来ない、つまり、人を選ぶ、万人受けはしない。ということ。/それでもやる。お金を稼ぐためじゃなく、食っていくためじゃなく、ただやりたいからやる。その馬鹿ともとれる一直線な情熱が、演劇をやる者達を駆り立てているのでしょうか。/曽田正人氏の作品『昴』にも通じるところがあると思います。

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おおみー さん
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