アイシテル ~海容~
」のレビュー

アイシテル ~海容~

伊藤実

とても感情移入してしまいました

ネタバレ
2016年5月5日
このレビューはネタバレを含みます▼ 児童による児童殺人という重たい事件をベースに家族というテーマを、被害者と加害者、両者の視点から切り込み描いた作品。とてもリアルで入り込んでしまいました。
子供は無垢で残酷です。
被害者であるキヨタンは両親から溺愛されていることを自覚しており、調子に乗っていたと思います。命を奪われてしまったことは何よりも不憫ですが、日常的に、自分は姉よりも愛されていて姉はヤキモチを妬いている、などというまでに7歳の子に思わせたのは、両親の罪であると思いました。
姉が怒るとき自分は悪くないと発言していますからきっと叱られたことなどなかったのでしょう。
人を思いやることは叱られて気がついたり、大切な人を傷付けて自分が後悔したり、失敗から身に付けるものだと思います。
「遠慮なく何でも口にしてしまう、でも7歳位の子はみんなそうでしょ?」とキヨタンの母親がいうシーンに嫌悪がありました。
こうした家庭環境の中、思春期盛りの姉が年齢以上に大人びているところがあまりに切なく、涙が出ました。事件後もこの姉が素直で、母親にきちんと感情をぶつけていたことが小沢家の大きな救いであったと思います。
ラストで幸せになって本当によかった。。
一方で、加害者である祐一くんも只々可哀相でした。幼い子供を手にかけてしまった彼の罪は余りに重いですが、大好きな母親に愛されていないかもしれないという不安と、凄惨な過去にまとわりつく自責の念が、幼い彼をどれだけ苦しめていたか、心が痛むばかりでした。
最終的にきれいにまとめられた終わり方で、そこは漫画だからこそかもしれませんが、、希望がやはり人間の生きる糧ですからフィクションでもきれいな終わり方でよかったと思います。
暗く重いテーマですが、読む価値のある漫画だと思います。同じような綻びは多かれ少なかれどこの家庭にも存在するものだと思いますから。。
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