ベネチアの夜に包まれて
」のレビュー

ベネチアの夜に包まれて

一重夕子/キャロル・モーティマー

正体隠して互いが出会うと恋に落ちる関係

ネタバレ
2016年6月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ ベネチア風の顔全面を隠せるよくある仮面ではなくて、作品で二人が用いたのは目の周りだけを覆ってるだけのタイプ。もとからよく知ってる知り合いであり、しかも嫌味を言い合うような仲で、ヒロインが前半では不思議なくらいに避けまくっている程には意識下にあるのに、そのタイプの仮面で声と背格好とで見分けられぬはずはない。

感情の推移が納得的な筋運びしてない。嫌いから好きに変わる過程が、「見つけた」「相性」であろうとも、自問自答を少し見せてくれないと。でなければ、なぜそもそも互いがその「出逢い」前までは、逆に好ましからざる感情まで見せていたのか、が描かれないと展開が調和しない。

名前の件も、父親の立場も、厄介なおじいさんのベル家における力の存在もバラバラ。おじいさんの途中出場の仕方が唐突すぎる。全キャラの行動にストーリー中の整合性がもっと欲しい。
台詞のなかにも、要所要所の単語選択ミスを感じる。

この話は、ニコロ・アレッサンドロしか本質的な結末へ動いていない。第一線で活躍するデザイナーであるはずのヒロインは不信の割には大胆であり、それでもただ悩んでいるだけ。
ニコロを中心とするなら、彼女と付き合うのは「大変だな」と感じたところが生煮え、ためらいが話のその後の進行の妨げになっているわけでもなく存在意義不明、ヒロインの前夫への接触が短時間行動過ぎるところ消化しきれず。
不足なものと余分なものが混ざっている。
ニコロの絵面は好みだが、頭取とか威厳とかとは無縁な、あり得ない若々しさで納得感無し。
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