このレビューはネタバレを含みます▼
幼い頃の私は裕一であり、母となってからの私はさつきであり、
私のかけがえのない一人娘は美帆子となって私を断罪しています。
どの時代にも通底しているのは、心が通い合わない哀しみーー
私を傷つけ続けた自覚もないまま母は老いさらばえ、
〝どうして〟と問い合える時の扉は永遠に閉じられようとしています。
美帆子たる娘にーー今からでも詫び、愛を伝えることは赦されるだろうか。
いずれのページからも頭を殴られるような気づきと嘆きを惹起させられ、
しかも「みんな可哀想」ーー純也の言葉に借りた大いなる赦しの温かさ。
これは……とんでもない名作なのではないでしょうか!!