キャンドルを消す前に
」のレビュー

キャンドルを消す前に

牧あけみ/デイ・ラクレア

おとぎ話の決着を、大人は見失っだたけです

2016年6月29日
例えばサンタさんも、十代後半になるまで長いこと、存在すると信じていた人を何人か知っています。メルヘンは小さなこどもだけのものでないし、リアリストが夢を見てはいけない理由なんてないと思うのです。そして気持ちは伝染する。そう思うことが事態を動かす力になると信じています。
笑うことが病を治すように、幸福の追求は、絶望感を打ち消すのではないでしょうか。バカバカしいと考えるより、そうであったら、本当にそうなったら、そうあって欲しい、夢には乗ってみることがまず大切な一歩に繋がる。

ママのいない子がこんな人がママならいいのに、と思い詰めてしまうことは、幼いときに親から怒られたりしたときどこかで見つけた人のことをこんな人が親であってくれたなら・・・、と憧れた経験から、少しも不思議でないです。あんなところに行ってみたい、とか、こんなすごい人がそばにいてくれたら、人並み外れた力を私も欲しい、などなどあらゆる理想像は物語世界にはいくらでも見つけられます。
辛いことがあると、その夢想はその在りようを変えるのかもしれないけれど。

このストーリーはほぼこども主導で進みますが、大人の感情は着実に現実味を帯びて行きました。できる限りこどもの話に付き合ってきたヒロインには、小さい子に妖精の存在を否定して目を醒まさせることは、まるで同時に自分にも彼を愛することへのテンションを冷まさせてしまったことと等しい効果を与えたかのようです。同じ世界の住人ではないかもしれない人のそばにいても、自分を妖精と信じた子にホントは居ないと告げたことは自分の存在意義がなくなったも同じ。

みんな幸せになる結末に無理はありませんが、レイヴァンが絵本を読んでリヴァーを理解する場面は、変化の表現がもう少し欲しかったと思いました。

姉妹の話で繋がるもうひとつのストーリー「秘密のサンタクロース」とのキャラ的な連携が強くなく、下敷きにするのであれば事前に刷り合わせが必要だった気がします。作家さんが違うことから絵柄の個性を差し引いても、キャラ描写の点で同一視しにくいのです。
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