日曜までフィアンセ
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日曜までフィアンセ

マヤ・バンクス/天野なすの

仕事で実力を認められたいのに取引先と恋愛

2016年9月5日
意外にアメリカは公私混同が多いとHQを読んで思うのですが、それは、日本の少女漫画お馴染みの先生生徒モノ恋愛のように、お話の世界のひとつの妄想展開の類型に過ぎないのでしょうか。

実際HQの大生産地、社長と秘書とのラブ発生率の高さには本当に驚かされているのですが、この話は、取引先社長と一営業の間柄。

相手社長のルール無用のビジネス以上に踏み込みまた踏み込ませるその強引さに、ヒロインはなんとかして仕事の成果だけを得るだけにとどめたい、という、働く女性ならあるかもしれない題材です。リスキーな恋になんか飛び込めない。
でも、商談の成立がかかっているとあれば対応を誤ればフイにしてしまう。これは、相手社長の一種の優越的地位の濫用ではないかと、ヒヤヒヤします。話はHQのヒロインですから、もちろんこの話でも彼には並々ならぬ感情を抱いてしまうし、彼もまた、ヒロインにマジ恋愛となるので、結果オーライではありますが。

家族に問題ありの札(カード)はここでは切られず、暗いものをしょったりしない状態で向き合います。だから純粋に二人の問題。二人の関係が特別になるのを避けたがったのは終始ヒロインのみです。仕事上で認められたいのに、そういうやり方で勝ち取ったと思われたくないのも当たり前です。

でも、好きになってしまって両想いならば、その境界は消えてしまう。実力を示しても正当に評価したがらない人だって存在するのですから、感情があるなら余計きつい状況ですよね。
愛がないのであれば、利用したと後ろ指差されても申し開きのしようもないこととなってしまいますが、このケースは「出会ってしまった」ケースなので、開き直って二人で進めるほうが、はた目スッキリです。

そこだけの話なのに、この話は、二人の理解に欠かせない要素を週末の私的な生活に踏み込んだことをきっかけに、より踏み込ませて、図らずも互いの家族紹介までしてしまいます。形はビジネスに置いておきたかったヒロインですが、認めたくなくても愛を自覚、一般的な経過をたどってエンディングへ。

進行を押し留めたくてどれだけ踏みとどまろうとしても、人間の気持ちの方はどうにもなりません。それで、ハッピーにエンディングを迎えられるのならいいではありませんか、という話だと思います。リスクない恋は本物ではないと。

楽しめます。
71頁の二人の足元描写、上のコマとかち合い不明瞭です。
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