ブライダル・スイート
」のレビュー

ブライダル・スイート

サンドラ・マートン/黒川あづさ

見た目より二人は盛り上がってる

2016年9月17日
本人は頑張ってるつもりなのに上司は評価してくれないのはよくあること。
この話は、ヒロインのことを解雇した会社のトップが、自らの非を認めきちんと謝罪、去る前の地位を遥かに上回るポストを三顧の礼で用意、彼女が働けるように新商品発表前の忙しいときには買い物までやってくださるほどの待遇の逆転ぶり。
その辺は働く女性としては痛快極まりなく、HQそっちのけで読める。しかも、優秀だが、男社会でアメリカと言えど彼女は決して出身大学の名前を黄門樣の印籠にしてこれなかった。学業成績も実社会の中では役立たなかった。彼女の社会でのもがきは、華麗な学歴でも厳しいなんてというところと、それでも問題直属上司を庇うなどして人間的に美しい生き方をしているところと、読んでいるこちらは、なんとか彼女にこれまでの大変さや払ってきた物凄い努力が全て良い回転に回り始め、どうか彼女が報われるますようにと、これはHQなんだからキレイな解決頼むよ、との気持ちになってしまう。

彼は非を認めてから潔い。保身になど走ったりせずに、物語前半の憎らしさは頁を追う毎に後退していく。

頭のよい女性イメージでは人間味を減らしドライさを強調することでひとつのキャラ形成ができるか知らないが、理系男子の女性版にも似た描き方に、読者としては感情移入の隙が余りなくちょっと淋しい。

そもそも、冒頭の3コマ勿体ない。表紙もあっさりしているのでせめて一番はじめに頁をめくるときの折角のカラーには、意外感かまたは気になるものをちら見せするとか、後を引くような仕掛けがあると良かったのではないのだろうか?

コマの進みと時間の経過が何となくポツポツしてる気がしてしまう箇所がある。
彼女がアタックをかける急展開場面では主体的に動き彼女というものを表しているが、展開前と進展場面のギャップは戸惑う。彼も戸惑っていると思われるが。
その分、彼側の心理描写がフォローしてるとは思うが、それなら彼がハーレクイン臭を代わって振り撒いてくれてもよかったのではないか?
彼視点でヒロインが戻ってきたことへの喜びを共感するには、ヒロインのアーサーとのやりとりによりヒロインサイドの事情を見せられた後だけに、一歩引かなければならず、そこで、読者の私はただの遠巻きの1ギャラリーになってしまうのだ。
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