雨の約束
」のレビュー

雨の約束

アン・スチュアート/尾方琳

彼に事情があっても傷ついたら去るの一択

2016年10月29日
石投げれば疑り深い男性に当たるHQ世界の紳士達の中にあって、この彼は一際女性不信に陥るのも無理はない事情を背負い、不幸と哀しみの中を独り過ごしてきた。涙の妹想い。

その妹と親しくしてきたヒロインが、妹を助けたい兄に会うことに。

巧妙ななすりつけにより犯人に仕立てあげられたヒロインに対する彼の容赦ない言葉と振舞い。数日間を過ごしても決して汚名を濯ぐことはなかった。
キューピットは妹であって、役どころは全編にわたりキーパーソンそのもの。

このストーリー、ヒロインとお友だち達の友情のお話として作ったほうが、彼の冷たさにいちいち読み手としてヒロインと一緒に傷つかずにいられたかもしれない。冒頭の不正疑惑シーンから濡れ衣と知らされているこちらは、冷たい彼に良い印象が持てないままに物語後半へ入ってしまうから。その為、格好よく見えない。

惹かれあっていても信じてくれなかったら一緒には居られない。

悪い女二人。ヒロインはなにも悪くなかった。
わるい奴一人。友達二人がヒロインを助けてくれた。

彼、わびる時が遅すぎなんだと思った。
彼に娘のことを伝えられなかった彼女の理由が悲しすぎる。娘のメリィちゃんはその為に一方の愛情を受けられないで一歳迄育った。

現実社会では男性研究者の陰で数多くの優秀な女性研究者がただ利用され、泣かされ、出世の踏み台にされてきたと思うが、あろうことか、犯人にさせられ学界追放の目にまで遭うこの話の悲劇に、誰も信じてくれないヒロインこそが大いなる人間不信になってもおかしくなかった。

なすりつけてきた人間が罪を暴かれただけでなく、破滅に至った顛末に触れてあったのは良かった。

どうしても惹かれていってしまう二人をドラマチックに盛り上げるための「雨」であるが、そこまでドラマが雨を必要としておらず、まして、スカーフのくだりでは、そこまで大切なのかと少々不思議な気もした。悪天候の中に飛び出すけれど。命懸け?救助場面が大袈裟。

他のレビューアーさんの言葉通りに私の目にも、住居不法侵入、そして、ヒロインに好意を寄せる男性からのプレゼントを取上げるのも傷害罪っぽい。
その他にも、言わなきゃ殴る、みたいな場面も、ヒロインの相手の適格性を疑うし、ヒロインのパーティでの行為とレストランでの婚約者への行為もいただけない。

この話、人心が荒んでる印象がちょっとするのだ。
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