愛を忘れた大富豪
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愛を忘れた大富豪

花津美子/スーザン・マレリー

愛を忘れたのでなく知らなかったのでしょう

2016年11月12日
娘のアナスタシアが、みんな私から居なくなっていってしまうと叫んだシーンは胸がつまってしまいました。一方、ヒロインの苦しい想いも判りますし、彼が此のままでいいと思っていて何が不満なのか彼女に戸惑っている、というのも判ります。三人がいておかしくない景色は本当の家族になること、答えはあるのですが、二人ではどちらも二人をその正解に連れていけませんでした。
ただ、養父母から、真の愛情を注いでもらったことのあるアナスタシアだけが、その風景が何に根差しているかを体験を通して知っていました。

6年、全て彼を中心にした生活だったんだ、と、ヒロインがふと気づく場面。仕事へ邁進することへの後悔などなくても、この先のことを考えるほど、寂しさも空しさも焦りも想像したのだろうと、察するにこちらが辛くなって目頭が熱くなりました。
気持ちは最初だけだったと言っていても、人間好きになった人を傍らに接して忘れるわけありません。
片想いも年月には入り込んで、支えて喜んでもらえることの達成感も、傍で身近に手の届かない存在を眺めるだけの立場の苦しさも、勝手に解釈してしまって。
この場面辺りではまだ全くヒロインは異性扱いされるような甘いシーンがないから。

この三人は三人共に親がフルに養育環境を与えていません。しかし、その三人が三人の生活に愛を求め、各様の愛を与えていた、と私は思います。

彼はそれまで気づけませんでした。この気持ちこそが愛なのだということを。気づかされて動く。彼女に伝えるべきこと伝え、行動すべきことを行動しに。

このストーリーはストーリー自体が魅力を稼いでいます。もちろん、原作からの再構成、取捨選択もあり、当然その力量の反映とは思います。
だけれど、主要人物のビジュアルには、より人目を引く絵にして欲しいのです。家でくつろいでいても彼は会社のトップです。そしてヒロインはその彼から申し分のない給料とボーナスをもらい、弟妹に学資と祖母に家をプレゼント、その物質的環境を見たかった気持ちが残りました。また、引き取られたあとの、買い揃えた洋服、ヒロインが変身させる場面でも外見の変化に父親のカルは目をみはるのでしょう!?多少は眩しがるみたいなのを見たい気持ちがあります。12歳設定だともう少し背伸びしたい年齢で、男の子の話もストーリー中にあるくらいです。ある程度キレカワ系を望んでしまいます。
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