運命に導かれて
」のレビュー

運命に導かれて

ニコラ・マーシュ/藤峰ゆき

知らないということは多分こうなるという事

2017年6月25日
家の事情を話せない。
彼は話す気がなくて、勇気もなかった。
しかし、別れの直接の原因は、話したら嫌われるとかそんな恐れを抱いているとは描写されておらず、ヒロインを巻き込んで傷つけたくないという、彼ジェドの、彼女を大切に思うからこその事。愛は確かだった。

彼女の立場からすれば彼が突然去ったことに当然怒りも悲しみもあり、読み手は此方へ共感しやすいが、ジェドの辛さ苦しさのほうが、このストーリーの中では主軸となりうると思ってしまう。

強くない人間の心が、ジェド本人を含め父親や弟の動きに特に見えて、しかも、ジェドはギリギリ頑張っていたらしいのに、そこは、彼が主役ではないとばかりに、彼の行動に間違いがあったと言いたげに、ストーリーは彼がヒロインの「信頼」を得ていないことを強調。
筋はその方が合理的とは思う。が、私は男ではないが、もしジェドだったら打ち明けられただろうか?

知らなかった、言えなかった、が起こしてしまった恋人たちの悲劇の、ハピエン転換ストーリー。
既に終止符が打たれていた格好の二人を、子どもの病がもう一度チャンスを与える。

強引な展開がない分、話が安全運転し過ぎ、それだけ話にトキメキ成分の不足感は否めず。
ジェドの向かい風は終わったが、これは、その向かい風ありきのストーリーだったので、それなかりせば晴れてやり直せるのか、の一点を何度も私は疑う。

長くパパ不在で育った子どもが不憫だった。病気だから、余計パパを思う日もあったかと思うと、そっちが読んでて胸が痛む。子供に大人の事情は無関係だから。

ジェドも、優柔不断男扱いされているストーリーだが、この環境、相当に不幸だった。


二人の愛は消えてはいないのでいかに信頼回復するかだけでラブストーリーを持たせなければならないのに、事柄を淡々と追いかける傾向の方が強くて、最後の説明にストーリーの成り行きを掛けすぎた気がしてしまう。


正面の照れ顔が、二人とも印象が良くない。特に私の目には、ヒロインの顔が、いわゆるアへ顔に似ているように見えてしまう。真顔がキレイなのに、折角の感情表現シーンでこちらにちょっとした違和感
を持たされてしまうのは、もったいないと思った。
いいねしたユーザ3人
レビューをシェアしよう!