追憶の赤いばら
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追憶の赤いばら

キャサリン・ジョージ/さちみりほ

ハピエンのHQだからこそ この決着が嬉しい

2017年7月16日
そう、あんな年の頃の恋ならもう簡単に十年、下手すると二十年ひきずってしまう。あの頃の感受性で恋してしまった相手には、見るだけで、一目見ただけでその日の気分は胸一杯。声なんてかけられない、何を喋ったらいいのか余裕なし、当時の画像は脳内に永久保存されてる。
十年前、ヒロインには最強の攻略スペシャリスト達が傍らにいた。それは素晴らしいサポーターで、アドバイザーで。ゲームに名を借りた恋の成就作戦。参謀たちは百戦錬磨の上級生たち。学生時代の1学年上は大人に見えるし、恋の上でも上級者たち。手厚い彼女らのサポートで本来本気の人には持てない余裕をキープ。最高の舞台装置で演じた。準備万端の役作り、

少女時代の恋愛感情は日本と変わらないんだなと実感した。

デートする間柄になれたのも何もかもお膳立てあってこそ。そして壊れたのも、お膳立ての作為があったからこそ・・・。積極さと勇気と、反面の、演じなければ彼の前に出ていけなかった「うぶさ」との繊細なバランス、成功の高揚と失敗の暗転。最高潮からのゲームオーバー。

さちみ先生が心理描写の達人ゆえ絵にしているけれど、そんなときの思いを絵的に表現するのは難しいことだと思う。
あれから何年経とうともその時の輝きを越えるものがない、という主人公を、本当に鮮やかに見せてくれた。

偽りは長続きしない。
けれど、ゲームの罪をあれから背負ったヒロイン。どんなに好きだったか、ゲームを装っての本気の恋、そこ大きいのに、でも、だからいいということではない。自業自得と片付けるには辛かろう。逃げ出したかったのは彼だけでなくヒロインもだったに違いなくて。あれから10年ヒロインは罰ゲームを科されたので、このストーリー、ハピエンで本当の成就という最高のコンプリートまで見届けられて、読後感は喜びで一杯だ。

しかし、十年の間に他の人が入る、そっちの関係は、この話にハプニングを起こしてくれる。表に出てこなかった事をさらけ出してくれるきっかけにもなり、結果としてキューピッドにもなったわけで、良くできた話に持っていってあるなぁと、感心した。

ああいう頃の感情を見事に絵に映しとり、かつ、忘れられない二人の、今の胸に巣食う感情を描き、いい作品だと思った。
また、ルームメイトとの友情も、ゲームに興じる外野以上の役割を持たせ、その辺りのドラマを垣間見せるパランスも、流石、という感じだ。
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