このレビューはネタバレを含みます▼
一度読んでからずいぶん、読み返せずにいました。
ナツメとヤコ先生がつらすぎるし、幾つかのレビューに見られるように、トキオがどっちつかずなような不誠実なような印象があって。
わかり易く親しみやすいナツメ。読み手はどうやったって、ナツメに気持ちがリンクします。
もう一人の重要人物、ヤコ先生も、愛情も牽制も率直で、でもとても男前で、気持ちが揺さぶられます。
だから見えにくいんです。トキオの気持ちが。
本文中何度も『トキオは何考えてるかわかりにくい』と警鐘が鳴らされているのに。
トキオの気持ちを拾うように再読すると、全く違って見えました。
トキオには、1つの嘘も誤魔化しもないし、心変わりもしていない。その言葉の通り、ずっとナツメが好きだったんだと、わかった上で読んだ時のこの切なさったら……。
ラストはやはり、遣る瀬ない涙でぼろぼろになるけれど、流せない涙をグッと堪えてナツメを支えるトキオの姿が今ならくっきり目に浮かびます。
ナツメの話だと思ってた。どこかトキオは蚊帳の外だった。
でも違う。これは、ナツメと、トキオの話。