このレビューはネタバレを含みます▼
母親と営む花屋の店員で見た目が強面、泣く子も更に泣いて涙だけ置いて逃げちゃう死神系男子・花園は、現役大学生ミスコン優勝者の超絶美少女・日和に告白されて、晴れて恋人同士に。それまで花の手入れと細やかな妄想しか楽しみのなかった彼が、これまでの不運な青春時代を取り戻すかの様に幸せたっぷりな日々を送るお話。珍しく両想いになるまでの過程が主旨ではなく、すでに恋人同士から始まり、以降ほのぼのとした展開と登場人物達の純粋さにひたすら心が洗われてゆきます。全体的にサラリとしたタッチで丁寧に描き込まれ、時折、ぶち込まれる秀逸なギャグの不意打ちに思わず吹き出してしまう事も。季節の行事に沿ったエピソードが多く、移ろいゆく時と二人の変化に終始、仏の顔で微笑ましく見守ってました。外見とは裏腹にロマンチストで乙女な花園と、意外とガッツリ肉食系な日和の立場逆転に悶絶の嵐。また初めての恋愛に対し、花園が嫉妬心や独占欲、度々の自己嫌悪と定期的に行われる一人反省会に翻弄されつつも、全くヒネくれたりせず、純度の高い心のまま二人で乗り越えていく姿に好感を覚えます。この世界の住人には悪意や野望、残酷さは一切なく、全員いい人。まさに類は友を呼ぶ。花園という名の通り、美しい花々に囲まれる運命にある花園くん。彼を中心に取り巻く人々は皆、個性的な美しい花々で、いつしか彼の周りは立派な花園になり、そして死神だと思い込んでいた自分自身も、誰かにとって、たった一つしかない花だったのだと気付く...これが理想の人間関係ですよね。ブーケを作る様に自分という花のまわりを、自分の居心地の良い違う色や種類の美しい花々で包みましょう。私達みんなが実はお花屋さんであり、一本のお花なのだと。ちなみにこのお話、最初と最後が同じ台詞でリンクしてますね。序盤は日和が花園に、終盤は花園が日和に「かっわいいなぁ...!」と心の声が漏れる所で幕が閉じています。1話では、日和が花園の本質を見抜いて出た言葉なのですが、当時の花園はまだ知らない日和の一面を見て首を傾げ、ちょうど1年後、自分も同じ言葉を口にする。ようやく彼が日和の本質に触れ、まるごと愛した瞬間だったのではないでしょうか。感じ方や考え方もよく似た二人。就職後や結婚式など具体的な将来は描かれないままでしたが、花園の切った前髪から射し込む光の様に、明るい未来を二人はこれからも歩いていく事でしょう。