ファインダーの渇望 ~ファインダーの標的シリーズ(7)【通常版】
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ファインダーの渇望 ~ファインダーの標的シリーズ(7)【通常版】

やまねあやの

悩む秋仁、苛立つ麻見

ネタバレ
2017年7月31日
このレビューはネタバレを含みます▼ 前巻の事件後、麻見宅に住み着くことになった秋仁。
麻見との距離がグッと近くなり、これまで敢えて明確にしなかった麻見への思いが随分分かりやすくなったように見える。だがこれで晴れて両思いに…とはいかないのがこのシリーズ。相変わらず二人の思いはボタンの掛け違い状態。

麻見の部下・須藤や検事で麻見の友人・黒田の登場を機に麻見の周囲の完璧な人々と自分を比べ、劣等感と嫉妬にかられて麻見に反抗したり焦ったりの秋仁。とんだ検討違いだが、そんな彼も可愛い。
だが彼を一番悩ませているのは、麻見の側ではない自分が麻見に守られて傍にいて、尚且つ彼と敵対する立場で仕事をしているという矛盾した状況。いつかはこの矛盾から脱しなければならないと分かっているのに、ズルズル続けてしまうほどに麻見から離れられなくなっている。

それを皮肉にも須藤に突き付けられ、自分でやるべき選択を迫られる場面は切なかった。だがその須藤もまた秋仁への醜い対抗心を燃やしているように見える。

一方、麻見にも変化が。
完全に秋仁としか呼ばなくなり彼への執着も凄まじい。今までは捕らえても飛び出していく秋仁を追うのを楽しんでいたのに『俺の手の中から外れることは許さない』と迫るほど余裕がない。
その反面、自分の領域に侵入してきた秋仁に対し前巻のように口出していない。だがそれはスパダリらしい余裕というよりは、自分のトラブルに深入りさせまいとして刺激出来ない感じ。そのせいで、須藤が麻見に隠れて行っていた裏取引やその須藤に仕掛けられた罠の追及が遅れているように見える。秋仁は麻見の弱点になってしまったのか。

そんな二人の心を見抜き刺激する黒田に煽られて、これまで麻見の味方にはならないと言っていた秋仁の気持ちが遂に動く。改めて読み返すとやはり黒田はキレ者だなぁ。

しかしやまね先生はこんな難しい恋をどういう形で決着させるつもりなのだろう。常々『乙女のための漫画』と表現しているだけにバッドエンドはないと思いたいけど、行き着く先を考えるとドキドキする。

一方で同棲生活の方は仕事から帰って来た麻見の鞄を秋仁が自然に受け取ったり麻見の不機嫌を一瞬で見抜いたり朝食を一緒に摂ったり、自然な生活感が堪らない。
番外編は夏の夜二編と高羽商事編。花火編は秋仁のためにどんだけお金かけたの?と驚く。高羽商事編は本編ではありえない立場逆転。オチはいつも通り。
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