静寂の月 Another
」のレビュー

静寂の月 Another

姉村アネム/森嶋ペコ

Another

ネタバレ
2017年9月10日
このレビューはネタバレを含みます▼ このノベルのタイトルについたAnotherは、「おかわり!」とハッピーエンドに満足した方の満腹中枢を更に刺激するお話ではなく、可能性のあった「異なる結末」のお話であることを指しています。
あらすじからも察せられますが、ハッピーエンドを読んだ後にもっと彼らが見たい!と思いながら読み進めるととんだ罠にハマることになります。それすらも楽しめる方にはオススメかと。 ネタバレする前に一つ、巻末の著者コメントから姉村先生の部分を抜粋させていただきます。 >全部にチェックがついたら本書をお試しください。
>□ハッピーエンドにイラッとしたことがある
>□最近ちょっとお疲れ気味
>□昼メロは嫌いじゃないがヒロインの性格がどーも
>□攻めは鬼 畜より優柔不断派
>□悪い夢から覚めてみたい 恐らくコミックを読んでこちらの小説を読んでみたいと思った方も多いと思いますが、このコメントで食指が動くかどうかも判断材料になることでしょう。電子書籍だと、なかなか叶わないので。 メリーバッドエンド系統が好きな方ならきっと満足する内容となっていると思います。ハッピーエンドの影は1%あるかないか。作者の姉村先生がおっしゃる通りコミックでの結末が正しい結末というのならAnotherと称されたこちらのノベルはまさに裏側です。待っていたかもしれないし待っていなかったかもしれない、どちらかと言えば正編よりもずっと現実味のある結末かもしれません。
途中からずっと心臓が握られてるように傷んで、読み進めるたびに途方に暮れそうになりました。「幸福」を切に追い求めて希望に縋る幹くんはあまりに美しいのに、あまりに悲しい。愚直なほど真面目で真っ直ぐて清らかゆえに、最後の最後まで自分の中ですべてを昇華してしまった。彼の幸福は彼の中で眠っていることでしょう。彼を渦中とした悲喜劇に終止符をうって夢の中で微睡んで欲しいし、それでも本当の幸福を知るために微睡みの中から引き上げられて欲しい気もします。喬木さんの優柔不断に振り回された一読者としては、彼が幹くんに幸福論を囁いてあげられるかはあまり期待できませんが。
続編は見たいような見なくないような、不思議な心地です。読めるのなら読んでしまうでしょうが、振り回されるよりこのまま弔ってあげたいような。
姉村先生の独特な世界に引き込まれるお話でした。
いいねしたユーザ9人
レビューをシェアしよう!