十九世紀の恋人たち Ⅲ 舞い戻りし花嫁
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十九世紀の恋人たち Ⅲ 舞い戻りし花嫁

佐柄きょうこ/エリザベス・ロールズ

妻が帰ってきたら今度こそ良き夫となろうと

2017年9月17日
誤解やすれ違いや説明不足、別れた事情は皆それぞれ。
誤解した出来事の一個一個が謎解きされていくストーリーの中に、別れてからの妻の辛さに思いをいたす描写のピースがきれいに入って、私はこの作品の、妻を愛する夫の気持ちの表現に打たれてしまった。

事あるごとに妻を信じる気持ちが固まっていく描写が良い。彼の、妻への愛溢れる言動もさりながら、妻の、たとえ夫から嫌われても自分は簡単に嫌いになることはない(本当に好きなひとだから)、と、二人の今後に対しても手抜かりなく暗示的に未来の安定を示しているところも!

そして、二人の別離生活の原因となった事件の真相究明、ヒロインの危機一髪と、実は内容盛り沢山。それを、捌ききってお見事。佐柄先生の手腕であると、感服する。佐柄先生は絵に荒さがないのが素晴らしい。


ハーレクインコミックスは、レベルのばらつきが多いが、先生の作品は安心して手に取れるところがよい。

あとがきにドレスの時代考証について触れていたが、そう、適当に描いていないのは、明らか。ビジュアル大事なコミックスならばこそ、女性の服装はもちろん、男性の服装まで、見た目の説得力重要。

シークものの嘘っぽさよりも、何故かヒストリカルものの安っぽさの方が分が悪いから。沢山描き込まねばならないヒストリカルを同一価格というのが申し訳ないくらいだ。

厳しめな見た目に反して大伯母さんの動きはきめ細やか。夫サイドのヒロインへの感情を味わえたのも、このかたのとりなしのお陰でもある。

事情で今や三連休くらいしかHQ三昧出来ないが、これはHQの要素欲張りな作品で満足だ。
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