このレビューはネタバレを含みます▼
ヒロインの詩緒ちゃんは、自立してバリバリ働きながらも子供っぽさとつらい生い立ちから生まれる孤独感が共存するアンバランスな女性で、好きな人にこそ怖くて手が伸ばせない‥というのは痛いほど共感できるので前半すごく切なくなりました。人には色んな面がありますが、それをガチャガチャした印象にならず2冊の本にまとめる作者さんの表現力は素晴らしいです。総一郎の建築関係の仕事はもちろん、ギャラリー経営の仕事への細かい描写も素晴らしく、よく取材されているんだなあと感心してしまいます。ただ、夏の終わり〜を読んだあとだったので、2人の肉欲的な部分が前面に押し出されている気がしてしまって‥。お互いにきちんと惹かれあっていることは事実なのですが、もっといい人いるんじゃない〜?!と思ってしまったというか。
詩緒は実の親、義理の親両方からすげなくされ、本来であれば当たり前に人から得られたであろう愛情に飢え、大切にされることに貪欲です。美人なのにどこか影があり、自信が持てないというのは共感を得られる1人の女性像としていいと思うのですが、詩緒が本来好きであった飴屋のような、どこまでも深く愛してくれて、という男性の方が詩緒には合っている気がします。勿論恋愛ごとなので合ってる合ってないの話では無いのですが、はたから見ていても総一郎は言葉少なです。詩緒は彼にとって奈月を凌駕するくらいなのですごく好きなのは分かります。可愛く思っていることも。でも、苦手であってももっと口に態度に出して欲しかった。詩緒は勇気を振り絞って、今まで手が出せなかった好きなものに手を出した。だからもっと総一郎にも変化が欲しかったなあ。甘やかすのが好きと言いつつあんまり詩緒を甘やかせてない‥もやもや。たくさん甘やかしても奈月のように詩緒は自分を見失ったりしないのに、甘やかしが足りない。総一郎ももっと別の人いんじゃねーの?!と思ってしまって。それこそ奈月みたいなタイプがいいんじゃない‥。何故なら詩緒はもっと愛情過多な男性が似合うからじゃ‥。詩緒が総一郎が良いというから良いんだけどさ‥いいけどさ‥
リアリティがある故に感情移入して、長文レビューをしました。なんか悔しかったので‥すいません。