リストランテ・パラディーゾ
」のレビュー

リストランテ・パラディーゾ

オノ・ナツメ

優しすぎるから困らせたくなる

ネタバレ
2017年12月5日
このレビューはネタバレを含みます▼ 2017年はACCAで始まりACCAで終わると思ってました。
それほどACCA13区監察課という作品にハマっていた私は、この名作が同先生の作品であることを知りながら、ただ「絵が苦手」という理由だけで読んでこなかったのです。
ですが読み終わった今、ACCAにハマった時と同じ、胸が締め付けられるような切なさと愛おしさを感じています。
どちらの作品にも共通する大人の哀愁漂う雰囲気。
ACCAはそれを国家レベルにしたもの。
対してこちらは街のレストランという小さな舞台で、そこに生きる人々の心理描写を丁寧に描いています。
レストランオーナーの妻の隠し子であるニコレッタは、同レストランで働くクラウディオに恋をします。
しかし、彼の左指には指輪が。
事情を聞くと、奥さんとは別れているようだが恋愛や結婚を求められるのが困るからその対策だというのです。
まだ結婚時代の気持ちを清算できていない。
そう確信したニコレッタは、指輪を外そうとしたクラウディオを叱りつけたり、元妻に「クラウディオの気持ちを知りながら店に来るべきではない」と言い放ったりします。
10代ぐらいなら私もニコレッタの猪突猛進ぶりに強く同調するでしょう。
ですが大人になって読むと、長く続いた恋や愛の終わらせ方というのは意外と難しかったりするというのも分かります。
元妻を呼び出して目の前で指輪を外し、「長くかかってすまなかった」というクラウディオの気持ちが痛いほど察せられるのです。
奥さんもまた彼が再出発することを願っていたというのはとても素敵な元夫婦の在り方だと思います。
ACCAといい本作といい、オノ先生の書く失恋は本当に胸に刻み付けられるものがあります。
悲しみではなく「苦味」と「寂しさ」のエッセンスが含まれたような別れの描き方が好きです。
まだ外伝も他の作品も読んでいないので、絵だけで判断せずこれから溺れるようにオノ・ナツメワールドにハマっていこうと思います。
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