このレビューはネタバレを含みます▼
落語の貧乏神、死神、寿限無を元にした二つのお話がすごい。ビックリした。落語の貧乏神は汚ったないじいさんなのに、ここでは薄幸の美女ならぬ美男でとてもセクシー。
落語によく登場する与太郎はマヌケな穀潰しで愛嬌だけはあるロクデナシなんだけど、与平も立派な与太郎で。疎まれるだけの存在だった貧乏神は与平から初めて金魚を貰って嬉しかったんだろうな。転職してまで与平の最期を看取る為に死神となって迎えに来るなんて。金魚が一匹ずつ死ぬのと与平の肺病の悪化と合わせて流れる時間の表現も素敵だった。ラストシーンは儚く美しかった。
その後死神は時代を経てこれまた与太郎な寿限無と会う。老いない為に定住も出来ず根無し草(デラシネ)の様に孤独に生きて来た寿限無は死神といると落ち着く。大戦中一度会ってるから寿限無の不老不死を知る唯一の人が死神で寿限無が離れたがらないのもわかる気がする。
死神は長い人生で二度目の貰い物(コロッケ)をする。一度目の与平の看取りで辛さを知ったのか、二度目の寿限無には命を助ける事に。
この事で死神組合から謹慎処分を受けるがどうやら無期限ぽい。そして寿限無も名前を忘れてしまっている様子。不老不死の二人はもしかしたら余命を貰えたのかな?と思えるラスト。
タイトル年々彩々も年々歳々をもじったセンスが素敵。落語にも死神達にも彩りを加え、デラシネの様に拠り所なく生きて来た二人に花を咲かせたのかな〜枯れるまで二人で幸せだといいな。ストーリー全体が持つ雰囲気が優しく柔らかくて、そこに落語の持つ人情味とおかしさを上手く混ぜ合わせていて感動しました。