シャトゥーン~ヒグマの森~
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シャトゥーン~ヒグマの森~

増田俊也/奥谷通教

こんなの熊じゃない!!

ネタバレ
2018年1月13日
このレビューはネタバレを含みます▼ 熊が好きで、期待して読みましたが、期待外れ。こんなの熊じゃない!!作り物っぽくて、安っぽい。異常にホラーチック。この羆、羆というより新種の怪物みたい。羆がみんなこうだと思われたら悲しい。本来、羆は木の実や草などを食べる臆病で大人しい動物。この漫画のままだと、地球上から熊を抹殺でもしない限り、人類の命が脅かされそうな勢いだ。この漫画のせいで、熊について間違った知識が蔓延しそう。
私も三毛別羆事件に興味をもち、現地に行ったり、苫前郷土資料館に行って話を聞いたり、この事件について書かれた「慟哭の谷」やこれを元にして書かれた小説「羆嵐」、その他、木村盛武が書いている羆関係の本のほとんどを読みました。これは100年以上も前の開拓民の話であって、様々な不幸な要因が重なって起きただけのこと。穴持たずが空腹から凶暴になるということは、ごくごく稀でめったにないことらしいし、そもそも人を食べるほど食に飢えているということは、弱い羆、落ちこぼれ、掟破り、アイヌ語でウエンカムイ、悪い熊ということになる。
この現代に人食い熊が当然の如くでてくるのは不自然。あと、三毛別の熊は女性しか食べなかった。一度、食べたらその味に執着するのが熊。胎児は食べていません。この羆は、男でも女でも子どもでもなんでも見境なく襲ってくるし、食ってるし、その辺がおかしい。それに、熊の習性からいって、銃の匂いがするのに見境なく何度も襲ってくるのは、おかしい。いくら熊の所有物があるとはいってもねえ。過剰演出。それから、羆がいるかもしれないとわかっている山でフィールドワークをするのであれば、羆対策が全くなされていないことに疑問を抱く。地元の猟友会に相談しておくとか、小屋に連絡手段がないのも不自然…
そもそも、子供を連れてくるなんて…と思わざるを得ない。この羆はおそらく、前にも人を襲っていたのでは?その情報が全く入らないのも不自然だ。ただただ羆=ゾンビやエイリアン、ジョーズのような感じで描かれていてガッカリ。ストーリーも稚拙。みんな、無駄に死んでいく。こんなので、熊の生態をわかった気にならないで。全然違います。原作者は、北大出身で羆のことを知り尽くしている研究者なはずなのに、どうしてこんな書き方をしたんだろう。編集者からの要望?メッセージ性もなし。何が言いたくて、この物語が生まれたのかわからない。私はこんなのが読みたいんじゃない。
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