愛罪の代償
」のレビュー

愛罪の代償

水戸泉/

愛という罪の果てに

ネタバレ
2018年1月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ 生い立ちやその後の失恋経験から、重すぎる愛故に愛する相手のことさえ信じられない攻(上司)と、平凡にごくまじめに生きてきた受(部下。ただし、愛情を正面から受け取ることができず、自分の気持ちをなかなか受け止められない、ある意味卑怯な性格、だと思う。)の出会いから、そのメリバ的結末までが、重いながらも流れるように一気に読ませる良作。

愛には甘く心が躍るような面があるはずなのに。でもここにあるのは、両者思い合っているのは確かなのに、決して緩やかに交わらない愛。攻のこれまで行き場のなかった愛情は、幼い子の持つような執着と分離できず、一度対象を定めたらもう加減ができない。失うものはないけれど、でもこれだけは手放したくない、相手に悲しい思いをさせたいわけではないけれど、彼だけは手放したくない、手放せない。こんな極端な人は普通いないと思いますが、この飢餓感や切なさって、ズシンと響くものがあるんですよね、とてもリアルに感じました。
ところで、受は攻に引きずられて狂った、と表面上は読めますが、本当にそうでしょうか?そもそも、彼が攻にされたこと(重要な部分なので伏せますが)で、怒ったりショック受けないって時点で何かがおかしくないですかね。ほとんど今でも無意識かもしれませんが、究極の誘い受なんじゃないかと思うんです、この受。一人称で書かれているので騙されそうになりますが、語り手は必ずしも本心を語るわけではありませんから。
結局は、似た者同士が出会うべくして出会い、お互いの狂気で狂気を満たし合う、そんな関係に見えます。お互いの壊れぶりにむしろ快楽を感じて、どちらが堕としたのか、堕とされたのか、そんなことはこの際どうでもいいんでしょう。お互いを満たし合う相手と出会えた、気持ちは通いあわなくても、お互いに相手を多分永遠に手に入れられた。これはハッピーエンドだと私は思ってしまいますね。

エロはかなり特殊なシチュで始まる上、女性が入るプレイもあり(ただし、女は単なる道具扱い)。人を選ぶといえばそうですが、あらすじやレビューを読んであえてこれを買う方は、多分気にならないはずです。終始執着や独占欲溢れたプレイですので、好きな方には堪らないかも。
残酷で、甘くない愛の狂気の果てを味わってみたい方は是非。
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