被写界深度
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被写界深度

苑生

じっくりと読めたとてもいいお話

ネタバレ
2018年2月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ カメラ好きな紺ちゃん×音楽から逃げて孤独な早川 の二人が高校の屋上での出会いから始まったお話。上巻で高校時代を、下巻では3年後の大学時代を。高校時代から紺ちゃんのブレない懐の深いいい男っぷりが光ってた。早川がモノトリアムに揺れる姿との対比がいい。

羨望や妬みに疲れた早川が、歌う時いい顔、友達とは作ってる顔など素の自分を見てくれる紺ちゃんと仲良くなる。早川じゃなくても惚れちゃうよね。その紺ちゃんに「誰かの為じゃなく自分の為に選べ」と言われ、歪んで苛立っていた早川の心にスッと入るのも納得。

自棄を起こした自分の過去を深入りせず受け止めてくれる人って貴重よね。興味本位だったり簡単に否定して踏み込んで来る人が多いから。紺ちゃんの様な距離感を自然に取れる人の事を大切に思う気持ちはとてもよくわかる。

高校時代は失恋したけどモノトリアム最中の早川には無かった事にするしか出来なかったのも切ない。上巻は早川の焦りや嫉妬や苛つきがとてもよく表現されていた。

そして三年後再会。早川のモノトリアムからかなり抜け出せた感じが嬉しい。そのきっかけは紺ちゃんの一言だろうし。再会からの二人の表情の描き方がとても魅力的。その表情のおかげで早川の溢れる想いや期待してしまうもどかしさ、紺ちゃんの三年間ちゃんと見ていたかった、のセリフなどが生きてくる展開。

そして告白のリベンジのシーン。二人らしさがとてもよく出ていて感動〜。三年分のチューからラストまで二人の掛け合いとイチャつきは高校生の屋上を思い出させる。けど夢に向かって努力してきた分大人になってる空気感もあって。いいわぁ。

写真と音楽、どちらも家庭環境など似通った境遇の二人の対比に嫌味がなくて面白かった〜。読後ニンマリと出来るいいお話でした。
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