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今月(11月1日~11月30日)

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シーモア島
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投稿レビュー
  • HOUSE

    奥田枠

    本当の支配者は、誰か。
    ネタバレ
    2025年10月18日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 「Kの支配者」に引き続く奥田枠先生の作品。
    令和に昭和が混ざったような「得体の知れなさ」が巧い。明らかに初心者向きではないので注意が必要。だがこの短編、何度噛んでも味がする。
    それが最大の注意点かも知れない。

    ●表紙にひとつの「HOUSE」が浮かび上がっており、すでに読者は”世界”に踏み込み始めている。
    照明に切り取られた「白磁」の肌。その”純潔”を覆う「漆黒」の闇。そして、職人のような丁寧さに抗いようの無い意志を潜ませる欲望の「紅」。
    目隠しされた表情は窺い知れないが、左目辺りに残る涙の跡は悦びの証か。

    ●龍彦と龍蔵は異母兄弟ではないかと思っている。それも龍斗を含めた三兄弟。
    圧倒的な支配者であった父親の存在に対し、意図的なほど描かれない実母。母の不在は、父の支配をより純化する。
    母の代わりに描かれるのは父の支配下にある使用人たちだけ。驚いたことに使用人たちは、一様に”正当に支配されたがっている”ように見える。可笑しな家だ。

    ●これは本物だと感じた場面がある。父の死後、この家の支配者となった兄の本性に気づく弟の龍蔵。龍蔵が鼻水や涙の混じる龍彦の「鼻血」を舌で絡めとる。
    「鼻血」は少年時代に兄弟が覚醒した象徴。
    龍彦の血が龍蔵の唾液に混ざり合い溶けていく。血は契約の証。彼らは”完璧”な兄弟となり、主従となったのだと。これを境に”家”が、痛みと快楽によって再構築されていく。

    ●龍蔵の表情が大変良い。一方的な強権を振るった父とは異なるタイプの支配者。キスをするときに目を開けて、龍彦の反応を見ている。口元に湛える笑みを本能的に使い分けているのは、やはり生まれながらに「支配者」の風格なのだろう。そんな龍蔵が一瞬だけ支配者から素の”弟”に戻る瞬間がある。「もうどこにも行かないでね」と言われた直後の「…一生躾けてやる」。自分の罪を認識した故の覚悟の言葉。この表情、是非刮目していただきたい。

    ●そして、ラストで震え上がってしまった。
    『この家(私)には支配者が必要だから』
    恐ろしいのは、これが龍彦と龍蔵どちらの言葉か分からないところなのだ。「Kの支配者」に続く奥田枠ismの系譜。

    最後の2ページ。
    本当の支配者は、誰か。

    修正は白抜き。R18出しましょう是非。
  • 落花と破鏡の

    里つばめ

    今までの里作品と読み方を変えて楽しんだ
    ネタバレ
    2025年10月11日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 里つばめ作品は何でも買う民です。

    全く毛色の違う2作同時発売。
    発売日当日(10/1・0時)に目をギンギンにして待っていたら、まさかの電子は10/10発売。ガンギまった眼でそのままDOGS読みました(斉藤さん愛してる)。

    ●タイトルは「落花枝に帰らず破鏡再び照らさず」からですね。真智と然、そして真智の姉の瑠璃、それぞれの名が、物語における彼らの在り方そのものと合致しています。

    ●最近の里先生、このような静かめなテイストの恋を描かれます。DOGSの斉藤さんやGAPSの片桐さん的なオラオラパワー系のオス、失礼、男性をお求めだと、少々拍子抜けするかもしれません。
    「君の公式をください」のような涼やかでしっとりとした読了感が残る作品です。DOGSと同種の面白さを求めると物足りなさを感じるので、作風が違うことを念頭において読むと楽しめます。

    ●先ほど少し書きましたが、名前が象徴的です。
    川の事故で姉の瑠璃に先立たれた真智。
    瑠璃が安楽や光の象徴であるとすれば、真智は失った光を「理」や「智」で埋めようとする者。けれど、理屈で納得しようとして返って痛みにつながっていたのが、冒頭の真智だと思います。
    真智の「理」に対し、然は、「自然(じねん)」であり、あるがままを受容する者。そして「理」を超えた世界、「理」で説明出来ない世界の介在者であり、声を聴く者でもある。然の存在によって、真智は「理」では到達できない癒しや悟りに触れることができる。

    ●一方、幼少から他者の声や感情を受け取り、母の悪意に傷つき、負の感情や死者の声に翻弄され続けた然の混沌や苦しみは抱えきれるものではない。
    それを「理」によって、然の心を整える錨となっているのが真智だと思います。

    互いの欠落を埋め合うように生き、恋をしている2人の姿であり、「落花帰らず…」とも、過去を再照し世界を肯定することで、現実は再び輝くのかなと。

    一見さらっと読めてしまうのですが、丁寧に作り込まれた作品だなと感じました(里先生さすがですッ)。

    ●最後に、突然ですがエッの話です。
    しっとりした恋に、突然【マグマ現る】のが里大先生の描くエッです。「理に覆われた静」を愛と肉体の肯定で覆す!!アツイ!!
    油断して凪の気持ちで読んでいた私も血が逆流し、心拍数が上がり、里大先生の方向(どっちだ)に拝ませて戴いた次第です。感謝。
  • 月とピエタ

    大地幹

    意外とあっさり風味/胃もたれしたい属
    ネタバレ
    2025年10月9日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 初読み作家さん。
    Xでたまたま出会い、発売日に読みました。
    辛口に書いてしまったので、お好きな方はそっと閉じてください…。


    ●ある過去の出来事が発端で、自分を曝け出すことに臆病な美大生と、人の目を気にしない変わり者の美術解剖学講師が互いに惹かれていく話。
    上下巻だがあっさり読める。冒頭に出てくる主人公が感化されたピエタのモチーフは面白いが、ストーリーラインの既視感からは抜け出せず、意外性や独自性という意味ではもう少しだったかも(偉そうにすみません…)

    ●もう少しキャラに語らせず、読者に委ねてほしいと思ったのが一つ。一から十までモノローグが入るので、手に取るように主人公の迷いや揺らぎが伝わる。
    でもこれは漫画なので、もっとに絵に頼っていいし、沈黙に頼っていいのではないかと感じた。逆に言えば読みやすいので、好みの読み味かどうかという話でもある。

    ●表紙の絵はすごくいいのに、本編の絵が惜しいと思ったのがもう一つ。
    淡白でキリッとした筆致だが、一本一本の線(特に瞳)に色香や感情の残り香を感じたかった。必ずしもキャラの表情=感情そのものではないと思うので。

    ●百合川先生がかなり良い。白いワイシャツとダークカラーのトレンチコートが似合うメガネで黒髪の細身の男って、嫌いな人いるんでしょうか(?)。”変人”がユーモラスに振れて可愛げに変わるのは見事。ただ、綺麗でなければガチのヤバイ人で終わったかもしれない。
    雨に濡れてシャツが透けた百合川先生の綺麗な体を、指の隙間からガン見して溜息ついた。「私はあの絵好きですよ」と話す百合川先生には羽が生えていたので、きっと天使なんでしょう。

    ●終盤は、突然誰オマな展開がドーン降りてきて、荒波乗り越えメデタシだったのだが、あまりの急展開に運痴な私は波に乗れずに潮が引いてしまった。

    ●めちゃくちゃ繊細に深掘りされて欲しいところが意外とスルッとサラッとツルッと通過したために、読後は胃もたれせずに店(作品)を出られますが、もしかしたら私はこの作品で超絶胃もたれしたかったのかもしれん…。

    ダラダラとした感想ですみません。
    自分が読みきれてないところも沢山あるはず。

    最後に。
    上巻のおまけが下巻後の2人を描いてるので、ご注意。(ネタバレではないが拍子抜けするかも)
    あと、エッはありません。キッのみです。
  • collar【合冊本】

    悍ましく美しい透明な黯さの白
    2025年10月4日
    読みホで読める超優秀文学的DomSub作品の合冊版(1巻:分冊版Collar(5)/#10まで収録)です。
    ナンバーナイン相変わらずすげぇ。
    読みホ登録してない民、頼むから読んでくれください。

    まず、ガタイのいい男前に目がいく。
    自然と、Subの樹を凝視する。すると、樹の視線の先にはいつも敦彦がいる。(恐らく)樹がSubであることに気づきながら、一切触れずにプレイでいざなう敦彦。敦彦には新というパートナーがいるのに。それにしても敦彦、なんという瞳で樹を見るのだ。それは恋焦がれる者だけが許される瞳だ。
    トライアングルかと思いきや、新は生まれたての雛のように敦彦を選んだだけで、彼はまだ卵という世界の殻を破る前の鳥。鳥はアプラクサスに向かって飛ぶ。
    雁字搦めの樹は解放されたいのか、己を痛めつけたいのか、黯い海の闇を泳ぐように他の相手を探す。

    未読の方も合冊版読み終えたら、恐らく続きが気になって、秒で短話追い派になることと思います。
    ただ、まだ続いている。おそらくまだまだ続く。何故なら表紙は樹だけしか写ってないから…!!
    困りましたね。生きる理由しか見つかりません。

    修正は白抜き。一箇所、消し忘れあり。綺麗。
  • 拒まない男 【電子限定特典付き】

    三月えみ

    【BL必修科目】読まないと単位落とします
    ネタバレ
    2025年10月4日
    このレビューはネタバレを含みます▼ おっとぉ…?久しぶりにすんげぇ攻め様出てきたぞ…?
    個人的には三月えみ先生史上最高に好きなタイプの攻め様になりそうで、ワックワク&ウッキウキです。

    村咲菖蒲(”しょうぶ”じゃなくて”あやめ”らしいよ)、仮面を何度剥いでも得体が知れなくて、その度にドキドキさせる男なんですよ。
    初対面、敬語で線を引いてきたと思いきや、「役」とは言え口調まで変わって距離間ゼロになってみたり、同性に無関心かと思いきやキスがエラい上手いときた。ホテルで腰にタオルを巻いたまま、キスだけで受けをイかす攻め様を初めて見たぞ俺は…。

    彼氏じゃないのに彼氏より彼氏味が強い。なぜかツライときにそばにいて、欲しい言葉と優しいキスをくれる。彼氏じゃないからこそ、その行動や視線や台詞に意味があってほしくなる。うん、ヤバいな…?
    そう、富と一緒に読者まで恋に堕とす攻め様です。
    次から次へと味付けが変わって、心を落ち着かせてくれないので、気づけばずっと菖蒲を追ってしまう。
    太ももの付け根に入ったイリス(菖蒲)の花。
    それより彼がパ○○ンなことに驚いてしまった。甘党らしくメロンソーダ味やイチゴミルク味がお好みで。早くもっと菖蒲を知りたいと思いつつ、一生謎のままでいてほしいとも思う。それが彼の最大の魅力かもしれない。

    「あなたは今一人じゃない。それだけは覚えておいてください」菖蒲が富に伝えたこの台詞、営業トークではなく本心だと信じてるので、これだけは覚えておく。

    最後に、律の父(上原)、死ぬまでとんでもなく根っからの悪いヤツでいてくれと願っているけれど、どうもそうじゃなさそうなので、ここまで悪いヤツになった理由が今後明かされていく感じでしょうか。

    2巻出るの何年後だろうな…いや、全然余裕で待つけどね。楽しみ増えた。

    修正は白抜き。(受けのレがあるので地雷ならば気をつけて。1巻で攻め受けのセッはまあ無いと言っていいでしょう。)