このレビューはネタバレを含みます▼
分量が少なく、淡々とした文体なので物語に移入できるか疑問だったが杞憂だった。
読み進めていくほど作者の、癖はないが妙にリアリティのある文章に引き込まれていき、時間を忘れて読みふけってしまっていた。
ストーリーとしては、長年人づきあいがうまくいかず、苦悩を抱えている主人公の高坂と佐薙が似たような強迫性障害の症状を抱えていることを通じ、中を深めていく。そうしていくうちに二人の間には友情を超えた感情が芽生えていく。しかし、彼らの体内に寄生虫が巣食っていることが判明し...
恋する寄生虫という題名通り、寄生虫を題材に扱った作品である。しかし、我々動物にとって寄生虫とは何なのか。もしも寄生虫が我々の体内に住み着き、感情や行動を操ってきたら。その時に我々が下す意思決定とはいったい誰のものなのだろうか。
ストーリーとしても純粋に面白く、高坂や佐薙の感情を追体験しているような気分を味わうことができた。多少説明的すぎる文章表現が気になる部分はあったが、それ以上の魅力がある作品だと感じた。彼の恋は寄生虫によって捏造されたものであったが、そこから生まれた愛はそうではなかった。