ももんがさん

世が便利になり、多くのものが生み出される一方で、ひっそりと失っていくものもあるのだと気付かされます。言葉遣いはその一つなのでしょう。古き時代だからこその気品と言葉の麗しさを感じたような気がします。もちろん、現代にも存在するのでしょうが、やっぱりこの時代背景だからこそ刺さるものもあると思います。私は語学の勉強と、日本文学に触れることで母国語の美しさに気がついたものの一人ですが、この作品は本当に一文一文が儚くて、繊細で、丁寧で、こんなに丁寧に人と、自分の人生と関われたらどれだけ理想的だろうかと思わされる内容でした。映像や音楽ではなく、文字で泣いてしまうのは久しぶりのことでした。私は普段、映像と音によって涙を促される人間なのですが、この作品を読んで、文字そのものに感情が動かされたことに驚きました。日本語はやはり美しいものですね。作者のストーリーの組み立てもとてもよかったです。