このレビューはネタバレを含みます▼
おそらく、計算され尽くされた構成で、何度も読み返してしまいます。
上巻の登場人物たちに比べると、坂之上と伴はかなり「ざらついている」人間です。
志津摩の愛嬌や、八木の自分の行いを後悔する善性、また塚本の心根の優しさや、橋内の情の厚さは、今回の二人には見られない。
伴はひたすら暴力的で、坂之上は前編ラスト近くまで自分本位な人間です。
だから、読んでとまどった人もいたんじゃないかな、と思います。
でも、何度も読み返すと…まだ前編なんだけど、二人の半生が見えてくる気がするんですよね。勝手な想像だけど。
伴が懲罰房の中で、一人で虫を指ではじくシーンとか、きっと子どもの時も同じことをしてた気がする。
また、あんなに暴力的なのに、年齢と階級が上の坂之上に物理的に抵抗していないのは、きっと幼少期に家族(特に父親)から暴行を受けて育ったからなんじゃないか、と。
また坂之上は自身の回想シーンで、妻との間に義務的に子どもをもうけていたと語っているが、そういう「あるべき姿」から外れないように、窮屈な思いをしながらも今まで人生を歩んできたんだろう。
この二人が、これからどういう結末を迎えるのか、ドキドキしています。