このレビューはネタバレを含みます▼
橘先生の綴る物語が大好きで、橘先生原作の小説、漫画は全て読んでいますが、その中でもこのR134は私にとって最高傑作です。
この本に出会ったのはもう10年以上前ですが、事あるごとに読み返したくなり手に取ってしまいます。
そして、何度読み返しても毎度初めて読んだかのように心揺さぶられます。
橘先生らしい情感ある文章に、生き生きとした魅力的なキャラクター、登場人物の感情の機微。
序盤から織り込まれた伏線なども秀逸。
とても繊細で美しい物語を書く方だと思います。
流麗な文章で軽快にすすんでいくストーリーに、茅ヶ崎の海沿いの風景が絶妙にリンクして、ボーイズラブとは思えないほど爽やかな仕上がり。
読了後は映画を見終わったかのような満足感があります。
物語は、訳あって仲違いしたまま数年離れてしまった梓朗と麻也が再開するところから始まります。
何がすごいってこのふたり、付き合っていないなんて嘘みたいに序盤から最後まで互いへの執着が強いです。
何気ない日常の一場面にも、双方向からの明確な執着や独占欲が見え隠れしています。
互いだけにひたすら向く恋情は側から見れば明らかなのに、当人たちはそれを正しく認識できていない。
大切すぎて麻也を1ミリも傷つけたくないのに彼の一番になりたいと願う梓朗と、梓朗以外にまるで興味がなく梓朗が世界のすべてである麻也。
無垢な麻也のストレートでひたむきな愛も、良識ある梓朗の包み込むような深い愛もどちらも愛おしいです。
麻也を大切に思う梓朗自身が、それ故に本当に欲しいものを遠ざけてしまっているのがもどかしくて、切ない。
常に自分に正直な麻也が、梓朗の決断を聞いて、どうしようも無い苛立ちや焦燥、悲しみに飲まれ、感情のままに当たり散らす姿に心が締めつけられました。
梓朗は梓朗で、常識人で理性的かと思えばままならない麻也への恋心に人一倍苦しんでいる。
最後はハッピーエンド。
このふたりはふたりでしか幸せになれなかったし、お互いでなければ絶対だめだったと思います。
初版発行から時間も経っており、橘先生の作品もここ暫くお目にかかっておりませんが、最も大好きな作者様、作品であるため感謝の気持ちを綴りたいと思いレビューしました。
この作品が誰かの元へ届いて、その方の大切な作品となりますように。そして、またいつか橘先生の新しい作品に出会えることを祈っています。