北見さん

歳の差恋愛作品は数あるけれど、
この作品はよくキャラクター構成がされているおかげで味のある作品だった。
主人公がただ年上の男を好きになるのではなく、
許嫁だからというわけでもなく、
純粋に文治を好いている描写の甘酸っぱさ。
文治も姫子をただの許嫁の少女でなくちゃんと1人の女性として扱い向き合っている、
しかしそこには親愛も含まれているとわかる描写の丁寧さによって生まれるアンバランスな感情表現。
無駄のない2人のやりとりのおかげで文治がいかに彼女を大切にしているのか読者に伝わってくる。
何より姫子の成長の過程が見ているこちらに文治や龍子同様の気持ちを体感させてくれる。
ページを読み進める度に少女の花が開いていく様は見ものだった。
可憐で太陽の下がよく似合う少女が文治を思う気持ちで時折年不相応な女の表情になる様は近代文学的エロスを感じる。
久しぶりに見ていて気持ちのいい作品に出会えた。