このレビューはネタバレを含みます▼
「残酷な神が支配する」の“神“が誰なのかが、物語の終盤に明かされます。まず読者は、それはそれは激しく揺さぶられ、時には目を背けたくなる程に精神を削られてしまいます。主人公の1人であるジェルミは、心理学でいわれる“トラウマ“に苦しみ、それを見守る義兄のイアンもまた、大変な苦悩を背負いながら生きていくしかなさそうです。ラストシーンは穏やかで、少し救われた様にも感じましたが、同時にいつまたトラウマに絡め取られてしまうかわからない、不安定な印象を私自身はもちました。扱っているモチーフは本当に重く、悲しく醜悪ともいえるシーンが満載にも関わらず、作者の優れた画力とキャラ設定が秀逸で、最後まで読破させる原動力となっている事は言うまでもありません。萩尾ワールドにどっぷり浸かってみたい方に、強くお勧めします!