このレビューはネタバレを含みます▼
恋するブライトに妹を選ばれ、ブライトに死地においやられた主人公。
その20年後に今度はブライトと妹の息子ロイドがやってきて最初は危険な目にも遭わされる。考えただけでも主人公イレーネは不幸です。
かつて恋したブライトにそっくりの見目麗しい青年に、孤独だったイレーネが惹かれるのはとても理解できます。
ただこの小説の素晴らしいところは、逆の、この見目麗しく賢い青年ロイドが恋に落ちていく経過、心情が丁寧に描かれている点です。それが他の、いわゆるスパダリが一目惚れする系の小説とちがうところ。
剣の腕も魔法の腕も最高と言われたのに未明の地に来た最初にイレーネに負かされ、その後も魔法では叶わないというある意味の尊敬の念。
お人よしで性格が良く、全く恩もないのに身を挺して自分を助けようとする女性。そして偶然見てしまった弱い部分。
ある意味普通の世界では孤独だったロイドが、未明の地で初めてイレーネという協力者を得、どんどん惹かれていき、4巻の最後でそれが決定的になって、5巻以降ロイドの思いが爆発するという展開になっていきます。
その辺を丁寧に書いてくれているところが、侯爵家の跡取りでかつ美しい王女が婚約者、そしてイレーネはいくら外観がいいといっても母の姉で20歳も年上、という状況でもイレーネに惹かれていくというストーリーに感情移入できる理由だと思います。
自分の父親がイレーネを未明の地においやったからこそ出会えたという真実を知ったロイドが(もしかしてもう察している?)どういうふうになるのか楽しみです。
今後もあまりややこしく展開せず素敵にストーリーが進んでいくことを願っています。