このレビューはネタバレを含みます▼
まずBLを読みたいという方にはあまりしっくりこない作品かもしれません。ペット、特に猫を飼ったことがある方にはかなり刺さる内容。猫って友達とも恋人とも家族とも違う、唯一無二の存在なんです。ただただ愛しい。そんな関係性が見事に描かれています。BLに限らず、私が今までに出会った作品の中で最も綺麗で純粋な気持ちで想いあう二人でした。
タマの猫っぷりが完璧すぎるし、矢澤もそんなタマに本当の猫として接します。タマと矢澤が戯れてるシーンは非常に可愛くて癒やされる。ずっと一緒に遊んでいてほしかったなぁ…
同じ町で生まれて、父親からの暴力があって…生い立ちは矢澤とタマとでそんなに違いはなかったように思う。ただ、誰が手を差し伸べてくれたかによって運命は大きく変わる。作中でタマが初めて発した言葉がなんともやるせない。どうしようもなく救われない状況、クソったれと言いたくもなる。
矢澤がタマに渡そうとしていた花、咲いていた場所からしておそらくナガミヒナゲシですかね。花言葉は「平静」「慰め」「癒やし」。二人はまさにお互いの存在が癒やしになっていたんでしょうね。
似たような見た目でカリフォルニアポピーという花がありまして、オレンジ色のカリフォルニアポピーの花言葉に「私の願いを叶えて」というのがあるそう。個人的にこちらもなかなかしっくりくるなぁと思いました。最終的に矢澤はタマに花を渡すことができず、二人の願いも夢のまま終わってしまいましたからね…
そりゃ矢澤とタマが別の町で幸せに暮らしていってくれるのが一番嬉しいですよ。最終話の扉絵のように。でもこの終わり方でよかったと思うし、私はハッピーエンドだと思っています。今まで経験した苦痛や悲しい記憶、負った傷、犯した罪、これらを背負って生き続けるにはあまりに重すぎる…
描き下ろしと作者様のあとがきにより、最後に矢澤が拾った子猫はタマの生まれ変わりでほぼ確。これでだいぶ救われました。これからたくさん愛されてね。
私は事前にネタバレレビューを確認した上で読みました。ネタバレなしでこの結末を見届ける際の衝撃がいかほどか気になるところではありますが、私はネタバレありで正解だったかな。死ネタでかなり落ち込むタイプなので、心の準備をしていなかったら耐えられなかったと思う。読了後は悲しくもあり、一方ですっきりとした心地よい余韻にも浸れる作品です。