このレビューはネタバレを含みます▼
最終巻まで読みました。理想のサイコパス攻めで、もう巷に溢れる「なんちゃってサイコパスBL」では満足できなくなってしまいました。サイコパスの醍醐味は変態性や猟奇性ではなく、共感性の欠如と徹底的な執着だと思うのですが、典彦は怖いくらいに見事な塩梅。
母の呪縛に囚われ、当主として「立派な男」であろうと願う育郎に「女の快楽」を刷り込み、女を抱けない身体にする(性機能を奪うハリガネムシのメタファーが効いている)。育郎がコンプレックスで苦しむよう仕向けるのに利用したさち子や蘭蔵に育郎が(どんな形であれ)情を向けるようになると、手段を選ばず排除しようとする。育郎の感情が自分に向くように、他人に犯させる。利用するだけ利用した健一も、役に立たないと見限るととんでもないタイミングであっさり○そうとするetc
育郎が自分だけに縋るように色々な人の人生を壊し、人の命を奪っていっただけでなく、その過程で「愛する人」であるはずの育郎が傷つき壊れていくのもおかまいなしという、良心のなさというか、欠落具合がまさにサイコパスでした。それでいて最後にようやく「傷つけたくない」と気付くのも「今更!?」感があっていい。普通じゃないです。
當間家自体の謎もまさしくドロドロと言った感じで、つまりあの三人は異母兄第だったり異父兄弟だったり叔父甥だったり従兄弟だったりする関係なんですね。魔性と獣ばかりの呪われた家だったわけで、最後は育郎自身が男を食い殺す(破滅させる)雌蟷螂になっていたと解釈しています。