このレビューはネタバレを含みます▼
天変地異により文明が失われた
500年も先に生き残った舞鶴太郎が
自分の持てる知恵と経験を活かして
出会った仲間と共に
力強く、そして賢く生き残ろうとする姿は
現代人に今必要なものは何かを問う
素晴らしい作品だと思う。
また通貨発行権についても触れられ、
原初の通貨発行権の興りというのはこういう流れ
だったのかもしれないと考えさせられ、
作者の世界に対する知識の底深さに感服させられる。
通貨発行権は資本主義の根本であり、
現代社会はその権利を振り翳しすぎた
副作用の末期症状とも言える閉塞感が
国際情勢、国内情勢を見渡すにつれ
散見される有様であるが、
このタイミングでこの作品を読むことより、
金が人を支配する世の中の構造やその愚かさ、
我々が生まれながらにして通貨の奴隷と化しているのに
それに気付かされないように気を逸らさせて
生き延びさせる現代社会の構造が
原始社会と呼んでもいいこの作品の世界観の中で
実に巧みに表現されていてその世界観に引き込まれる。
プロパガンダや誘導された情報ばかりが飛び交う
この現世界において、大人たちは勿論だが、
特にこれから厳しい時代を乗り越えなければならない
若者にこの作品が多く読まれることを切に願う。
舞鶴太郎は通貨発行権についてこの作品の世界では
誰よりもアドバンテージがあるにも関わらず
自ら支配者になろうとはせず、出会った仲間達に
その権利を委ねようとするその姿は
我々が描くべき未来のヒントになるかもしれない。